第13回 システム導入のポイント

2025年1月23日
第13回 システム導入のポイント

【5分で納得コラム】今回のテーマは、「システム導入のポイント」です。

FP&Aは、企業の戦略的意思決定を支える重要な役割を果たします。その業務を効率化し高度化するためには、適切なシステム導入が不可欠です。システム導入においては、リアルタイムのデータ統合、柔軟なシナリオ作成、ダッシュボードを活用した可視化機能が特に重要です。これらを実現するために、ERPやBIツールを活用することで、正確な予測と迅速な意思決定を可能にします。また、RPAやAIを活用したデータ収集や予測分析の自動化により、FP&A担当者がより戦略的な業務に専念できる環境を整えることも必要です。
今回は、システム導入のポイントとして、システムの基本的な内容について解説いたします。

第13回 システム導入のポイント

1. システムの種類

システム導入を検討する際には、システムの種類や特徴を理解し、自社のニーズに最適な選択を行うことが重要です。以下では、システムの主な分類と、それぞれの特徴について解説します。

(1)データベース(DB)

DBとは、一定の形式に基づいて整理されたデータの集まりを指します。この観点からは、システムは「基幹システム」と「ERPシステム」に分類されます。
基幹システムは各システムが独自にDBを保有しているのに対し、ERPシステムはDBを一元的に管理する仕組みを持っています。

(2)構築方法

構築方法の観点から「パッケージシステム」と「スクラッチシステム」に分類されます。
パッケージシステムは既に完成されたシステムを導入するものであり、完成されたシステムを導入する形態。コストや導入期間の観点で優れていますが、カスタマイズの自由度が制限されます。

スクラッチシステムは要件に基づき一から構築するもので、独自の業務に対応しやすい反面、コストと期間が高くなります。

(3)利用形態

利用形態の簡単から「オンプレミス」と「クラウド」に分類されます。
オンプレミスはシステムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、あるいはソフトウェアなどを自社で保有し運用する形態です。セキュリティやカスタマイズ性が高い一方、初期費用や保守コストが大きい特徴があります。

クラウドは、自社で保有するのではなく、サービスとして提供されているものを利用してシステムを利用する形態です。初期投資が抑えられるほか、拡張性や運用効率が高いですが、標準機能への適応が求められる場合があります。

2. 基幹システムとERP

(1)基幹システム

基幹システムとは、企業の運営において欠かせない業務を管理するためのシステムやソフトウェアの総称を指します。下記の図では、販売管理、在庫管理、購買管理、会計システムを例として挙げていますが、他にも生産管理や勤怠管理などが含まれる場合があります。

基幹システムはシステムごとに独自のDBを持ち、それぞれが独立した形で運用されます。このため、システム間でデータをやり取りする際には、システム間連携が必要となります。企業が成長段階に入ると、業務量や基幹業務も増加するため、基幹システムを導入することで業務効率を向上させるとともに、人件費を削減し、人的リソースを利益拡大に活用することが可能になります。

(2)ERP

ERP(Enterprise Resource Planning、企業資源計画)は「統合基幹業務システム」とも呼ばれ、企業内の情報をリアルタイムで一元管理するためのシステムです。基幹システムと異なり、ERPは単一のデータベース(DB)を用いることで、システム間連携が不要となり、業務プロセスのスムーズな運用を実現します。

近年、SaaS(Software as a Service)型のERPの利用が増加しています。SaaS型ERPは標準化されたサービスを提供するため、導入時には「Fit to Standard」のアプローチが重要です。Fit to Standardとは、自社の業務プロセスをソフトウェアの標準機能に適応させる考え方を指し、これにより以下の効果が期待されます。

  • ①カスタマイズの最小化:複雑な変更を避けることで導入コストを抑えられる。
  • ②導入期間の短縮:迅速な稼働開始が可能。
  • ③保守性の向上:標準機能に適応しているため、システムのアップデートに対応しやすい。

一方で、SaaS型ERPを採用する際には、自社固有の業務プロセスを変更する必要がある場合があり、これが競争優位性の低下リスクにつながる可能性があります。そのため、SaaS型ERPの導入にあたっては以下の取り組みが重要です。

  • ①業務プロセスの見直し
  • ②要件の整理
  • ③カスタマイズの最小化

これらを戦略的に進めることで、SaaS型ERPの効率性を最大限に活用し、運用コストを抑えながらビジネスプロセスを最適化することが可能です。

イメージ

図1 基幹システムとERP

3. パッケージシステムとスクラッチシステム

近年、汎用パッケージソフトの性能向上やコスト面での優位性から、一からシステムを構築するケースは減少し、パッケージシステムを利用する企業が増えています。

(1)パッケージシステム

パッケージシステムとは、すでに製品として完成しているシステムを指します。主なメリットは以下の2点です。

  • ① コストの低さ:スクラッチシステムに比べ、初期費用が安価で済みます。特に業務内容が一般的な企業に向いているため、幅広く利用されています。
  • ② 短期間での導入:動作環境が整っていれば、スクラッチシステムと比較して導入や運用開始までの期間が短いのが特徴です。

一方で、デメリットは以下の3点が挙げられます。

  • ① カスタマイズの制約:一定のカスタマイズは可能ですが、スクラッチシステムほどの自由度はありません。
  • ② 業務適合性の限界:標準的な業務向けに設計されているため、独自性や複雑性の高い業務には対応しづらい場合があります。
  • ③ 業務フローの調整:自社の業務内容がシステムの標準機能に一致しない場合、現状の業務フローをシステムに合わせて変更する必要が生じることがあります。この場合、カスタマイズが必要になり、初期費用が高額になる可能性があります。

(2)スクラッチシステム

スクラッチシステムとは、企業のオーダーに基づき一から構築するシステムを指します。主なメリットは以下のとおりです。

  • ① 業務適合性:自社の業務に完全に適合したシステムを構築できます。
  • ② 柔軟性:独自性や複雑性の高い業務にも対応可能です。
  • ③ 拡張性:業務の拡大や変更に伴うシステムの修正や拡張が容易です。

一方、デメリットとしては以下のとおりです。

  • ① 高コスト:一から構築するため、パッケージシステムに比べて初期費用が高額になります。
  • ② 開発期間の長さ:開発に時間を要するため、導入や運用開始までの期間が長くなります。

会計や人事関連、予算管理といった定型的な業務では、カスタマイズを必要とせず、標準的なパッケージシステムをそのまま導入するケースが多く見られます。一方で、販売管理や在庫管理のように業務パターンが多様で企業ごとのニーズが異なる分野では、業務要件に応じてカスタマイズを加えた形でパッケージシステムを導入するのが一般的です。

執筆陣紹介

仰星コンサルティング株式会社

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