ストレスチェック
小規模事業場でも義務化へ
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「ストレスチェック 小規模事業場でも義務化へ」です。
ストレスチェック 小規模事業場でも義務化へ
1. ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、労働安全衛生法に基づく「心理的な負担の程度を把握するための検査」のことをいいます。この検査は、労働者自身のストレスへの気づきを促す等して労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的に、2015年12月1日より事業者にその実施が義務づけられました。
ストレスチェックの実施義務がある事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。当該事業場では、1年以内ごとに1回、定期にストレスチェックを実施し、その結果を所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。なお、現時点では、常時50人未満の労働者を使用する小規模事業場では実施義務はなく、努力義務となっています。
また、ストレスチェックを実施する対象者は、常時使用する労働者です。具体的には次の①②のいずれにも該当する者になります。- ① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者のうち、当該契約の契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含みます。)であること。
- ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
ストレスチェックは、会社ごとに作成したストレスに関する質問票に労働者が回答して自分のストレスがどのような状態にあるかを調べる簡単な検査になりますが、その質問票には「仕事のストレスの原因に関する質問項目」、「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」、「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」を含める必要があります。
なお、質問票の例として厚生労働省から「職業性ストレス簡易調査票」が示されていますので、そちらを使用する対応も可能です。2. 小規模事業場でのストレスチェック実施率
2025年2月に東京労働局から発表された「メンタルヘルス対策等自主点検実施結果について」によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は企業規模全体で91.7%になっています。
また、その取組みのひとつであるストレスチェックを実施している事業場の割合は、50人以上の事業場では98.2%であるのに対し、50人未満の小規模事業場では51.2%になっています。
50人未満の小規模事業場における実施割合は前年度(47.2%)よりも増加し半数を超えたものの、50人以上の事業場に比べるとかなり差があります。3. 50人未満の小規模事業場でも義務化へ
厚生労働省の発表によれば、精神障害の労災支給決定件数は2023年度は過去最高(883件)で、10年前の約2倍になっています。また、精神疾患により休職したり、退職したりする労働者がいることは、現在では珍しいことではなくなっています。
そのような状況の中で、厚生労働大臣等の諮問に応じて労働政策に関する重要事項の調査審議を行う労働政策審議会より、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することの重要性は事業場規模に関わらないものであることから、すべての事業場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、50人未満の小規模事業場も含めて事業規模にかかわらずストレスチェックの実施を義務とすることが適当であるとの建議がなされています。
今後、この建議の内容を踏まえて労働安全衛生法の改正案が検討される予定です。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。