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女性活躍推進法から見えてくる人事担当者の課題

2016年2月12日

2016031605 女性活躍推進法が2016年4月1日より施行されます。これにより常時雇用する労働者数が301人以上の企業は女性労働者の活躍推進に関する取組が義務付けられました。制度本来の目的や企業イメージといった外部への影響を踏まえれば、時限立法とは言え積極的な取り組みが望まれます。 今回は女性活躍推進法の取り組みから見えてくる、人事担当者の課題についてご紹介します。



1.女性活躍推進法とは

女性活躍推進法は、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会を実現することを目的としています。基本原則からは、「女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供」「性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行により、女性の活躍に対して及ぼす影響への配慮がされること」「必要な環境の整備等により、職業生活と家庭生活の円滑かつ継続的な両立を可能にすること」「女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきものであること」といったことが掲げられており、政府が女性労働者の活躍に大きな期待を寄せていることが伺えます。
その背景には、国内企業の「就業を希望しながらも働いていない女性が300万人」「女性の非正規雇用者の割合が約6割」「管理的立場にある割合が1.3%」といった現状に対し、ダイバーシティの確保を促し、国内企業のパフォーマンス向上や将来の労働力不足対策に繋げようとする政府の狙いがあるようです。 


2.一般企業に求められること

2016年4月1日の施行に合わせて、対象となる企業は同日までに女性活躍推進のための行動計画の策定と届出等を行う必要があります。

【対象企業の取り組み】
<ステップ1>
 ●状況把握・・自社の女性活躍に関する状況を把握
 ●課題分析・・把握した状況から自社の課題を分析
<ステップ2>
 ●行動計画策定・・自社の課題に基づいた目標を設定し、目標達成のための具体的な取り組みを計画
 ●行動計画の社内通知、公表・・行動計画を従業員に周知し、外部に公表
<ステップ3>
 ●行動計画の届出・・行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届出
<ステップ4>
 ●取組の実施、効果の測定・・定期的に数値目標の達成状況や実施状
  況を点検・評価
 →ステップ1へ
 

ここで注意しなければいけないのは、ステップ2で行う目標設定です。目標数値を決定するために、先ずは、状況把握・課題分析(ステップ1)に取り掛かる必要がありますが、状況把握の対象項目を見ると、定量化が難しい項目や、これまで管理していない項目が目につきます。更にこれらの項目に対して、自社の特性を配慮しなければならないことを考えると、現状の把握だけでも、相当の労力を要することがわかります。


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また、具体的な目標数値の設定にあたっては、各企業の自主性に委ねられ、女性の求職者等がインターネット等で容易に確認できるよう、取り組みによる改善効果の数値情報も公表していかなければなりません。企業イメージや採用活動などへの影響を考えれば、安易な目標設定はできません。人事担当者は精度の高い現状把握・課題分析をした上で、自社にとって適正な目標数値を設定する必要があります。


3.人事データの活用が直近の課題
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このように、女性活躍推進への取り組みは、企業メリットが非常に高い反面、人事担当者にとっては、大きな業務負担を強いられることになります。特に、本制度では定性的な情報を定量的に数値に置き換え、分析・統計をすることになりますので、これまでのような人件費分析(人時生産性分析)よりも、人事データの活用領域を広げていかなくてはなりません。

しかしながら、多様な人事データの管理は人事システムのデータベースとは別にエクセルで行っているのが一般的です。いわゆる人事データベースが分散しているという状態です。この状態で新たなデータ活用を行うとなれば、より煩雑な作業を属人的におこなわれる危険性もあります。属人的になれば、偏った分析による「新たな気付きを得る機会の損失」にも繋がるため、本来のデータ活用の目的も果たせなくなるかもしれません。人事情報は「人材」という企業にとって重要な情報である以上、その情報活用の属人化は避け、セキュアな環境と、一元化されたデータベースから、柔軟なデータ活用をできるようにすることが望ましいのです。

今後は人材ビッグデータという概念により、人事データ活用の領域は広がり続けていくことでしょう。データを取扱う人事担当者も、多変量解析などの統計学にまつわるスキルを要するなど、人事の仕事のあり方そのものが変わろうとしているのかもしれません。今回の女性活躍推進法を機に、人事データ活用の現状を見直し、これからに備えておくことが人事担当者の直近の課題ではないでしょうか。

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