人的資本可視化指針とは何?概要をまとめました
-
【5分で納得コラム】今回のテーマは「人的資本可視化指針」です。
目次
人的資本の開示等の概要
はじめに
2022年8月30日に内閣官房より上場企業向けの人的資本に関する開示のガイドラインとなる「人的資本可視化指針」が公表されました。また、2022年8月31日には金融庁から「2022事務年度金融行政方針」が公表され、有価証券報告書において人的資本情報開示を義務付ける方針が示されました。今回は、これらの概要をご紹介したいと思います。
1. 「人的資本可視化指針」の概要
(1) 人的資本の可視化の必要性
競争優位の源泉や持続的な企業価値向上の推進力は「無形資産」になってきており、その中でも人的資本への投資はその中核であり、社会のサステナビリティと企業の成長・収益力の両立を図る上で重要な要素です。そのため、多くの投資家が、人材戦略に関する「経営者からの説明」を期待しています。経営者、投資家、そして従業員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため、「人的資本の可視化」が不可欠となってきました。
(2)人的資本の可視化の方法及び開示項目
人的資本の可視化において企業や経営者に期待されていることを概括すると、経営層・中核人材に関する方針、人材育成方針、人的資本に関する社内環境整備方針などについて、自社が直面する重要なリスクと機会、長期的な業績や競争力と関連付けながら、目指すべき姿(目標)やモニタリングすべき指標を検討し、取締役・経営層レベルで密な議論を行った上で、自ら明瞭かつロジカルに説明することです。そのためには、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの要素に沿って開示することが効果的かつ効率的です。
開示にあたっては、「独自性」と「比較可能性」のバランスを確保しながら、「価値向上」の観点からの開示なのか、「リスク」マネジメントの観点からの開示なのか、明確にして説明することがポイントとされています。
下記の表は「人的資本可視化指針」で示された開示項目の例です。
2. 有価証券報告書における人的情報開示の概要(2022事務年度金融行政方針)
投資家と企業との建設的な対話を促進し、コーポレートガバナンス改革を⽀える観点からは、企業情報の開示の充実に向けた取組みもあわせて進めることが重要です。特に、人的資本が企業の持続的な価値創造の基盤になることについて、企業と投資家との間で共通の認識を持つことが重要であり、投資家からの人的資本に関する情報のニーズも高まっていることから、有価証券報告書において、人材育成方針、社内環境整備方針、男女間賃⾦格差、女性管理職比率を含む非財務情報の開示の充実を図ることとされました。具体的な開示項目や導入時期については、今後の法令の改正動向に留意する必要があります。
(参考情報)
・(内閣官房HP)人的資本可視化指針
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_dai1/index.html
・2022事務年度金融行政方針について
https://www.fsa.go.jp/news/r4/20220831/20220831.html
執筆陣紹介
- 仰星監査法人
-
仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
-
≪仰星監査法人の最近のコラム≫
※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。