高度プロフェッショナル制度の対象業務
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働き方改革法のうち現在審議がなされている「高度プロフェッショナル制度」について、対象業務(案)が示されましたのでその内容をご紹介します。
高度プロフェッショナル制度とは
時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務の適用を除外した労働時間制度で、今回の改正により新設されたものです。
対象となる業務(素案)
高度プロフェッショナル制度の対象となる業務は、労働基準法施行規則で定められる予定ですが、2018年11月14日の労働政策審議会で5つの対象となる業務(案)が示されました。
その内容は下記の通りです。 - 1.金融商品の開発業務
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対象になり得ると考えられる業務 対象にならないと考えられる業務 - 金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発の業務(例:資産運用会社が行う新興国企業の株式を中心とする富裕層向け商品(ファンド)の開発)
- 金融商品の販売、提供、運用に関する企画立案又は構築の業務
- 保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務
- 商品名の変更のみをもって行う金融商品の開発の業務
- 専らデータの入力・整理を行う業務
- 2.金融商品のディーリング業務
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対象になり得ると考えられる業務 対象にならないと考えられる業務 - 投資判断に基づく資産運用(指図を含む。)の業務(資産運用会社等におけるファンドマネージャーの業務)
- 投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務(資産運用会社等におけるトレーダーの業務)
- 証券会社等におけるディーラーの業務(自社の資金で株式や債券などを売買する業務)
- 有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断を伴わない顧客からの注文の取次の業務
- ファンドマネージャー、トレーダー、ディーラーの業務の補助の業務
- 金融機関の窓口業務
- 個人顧客に対する預金、保険、投資信託等の販売・勧誘の業務
※トレーダー・ディーラーの業務であっても、「業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うもの」は対象外。したがって、市場が開いている時間はそこに張り付くよう使用者から指示され、実際に張り付いていなければならない業務や、指示された取引量をこなすためには終日取引を継続し続けなければならない業務は、実質的に時間に関する指示を使用者から受けているものとなり、対象業務にはならない。
- 3.アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)
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対象になり得ると考えられる業務 対象にならないと考えられる業務 - 有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務
- 一定の時間を設定して行う相談業務
- 専ら分析のためのデータ入力・整理を行う業務
- 4.コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)
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対象になり得ると考えられる業務 対象にならないと考えられる業務 - 企業の事業運営についての調査、分析を行い、企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案などを提案し、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務(例:コンサルティングファームが行う顧客の海外事業展開に関する戦略企画の考案)
※調査、分析は顧客の事業の運営に関する重要な事項について行うものであり、顧客から調査、分析を行うために必要な内部情報の提供を受けた上で、例えば経営状態、経営環境、財務状態、事業運営上の問題点、生産効率、製品や原材料に係る市場の動向等について調査、分析することが必要である。
- 調査、分析のみを行う業務
- 調査、分析を行わず、助言のみを行う業務
- 専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務
- 個人顧客を対象とする助言の業務
- 商品・サービスの営業・販売として行う業務
※「業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うもの」は対象外。したがって、上席の指示やシフトに拘束され、働く時間帯の選択や時間配分に裁量が認められない形態でチームのメンバーとして行う業務は、実質的に時間に関する指示を使用者から受けているものとなり、対象業務にはならない。
- 企業の事業運営についての調査、分析を行い、企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案などを提案し、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務(例:コンサルティングファームが行う顧客の海外事業展開に関する戦略企画の考案)
- 5.研究開発業務
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対象になり得ると考えられる業務 対象にならないと考えられる業務 - 新たな技術の研究開発、新たな技術を導入して行う管理方法の構築、新素材や新型モデル・サービスの研究開発等の業務(例:メーカーが行う要素技術の研究、製薬企業が行う新薬の上市に向けた承認申請のための候補物質の絞り込み)
- 作業工程、作業手順等の日々のスケジュールが使用者からの指示により定められ、そのスケジュールに従わなければならない業務
- 既存の商品やサービスにとどまり、技術的改善を伴わない業務
- 他社システムの単なる導入にとどまり、導入に当たり自らの研究開発による技術的改善を伴わない業務
※対象業務は部署が所掌する業務全体ではなく、対象となる労働者に従事させることとする業務であり、例えば部署の名称が「研究開発部」 であったとしても、その部署において行われる業務の全てが対象業務に該当するものではない。
当該制度の対象者に対しては、深夜割増を含めた一切の割増賃金を支払う必要がありませんが、導入にあたっては、年収要件(1,075万円を参考に現在審議中)や、労使委員会での決議や本人同意などの手続き、健康管理時間の把握などが求められますので、今後確定する法令の内容を踏まえて準備が必要になります。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。