働き方改革推進関係法案が示される

2017年9月21日

以前のコラムで「働き方改革実行計画」 についてご紹介しましたが、その実行計画を具体化するものとして、今月上旬に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」が示されました。
今回も、前回の雇用保険法等の改正時と同様の手法により、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等の関係する法律の改正案の要綱がまとめて示されています。



厚生労働省より示された今回の法律案要綱のポイントは、以下の通りです。

項 目 法 律
(施行期日)
1.働き方改革の総合的かつ継続的な推進
働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定めることとする。 雇用対策法
(公布日)
2.長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
(1) 労働時間に関する制度の見直し 労働基準法
(2019年4月1日
但し、②は
2022年4月1日)
①時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
※自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外あり。研究開発業務について、医師の面接指導、代替休暇の付与等 の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しない。
②月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。
③使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
④企画業務型裁量労働制の対象業務への「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」の追加と、高度プロフェッショナル制度の創設等を行う。(企画業務型裁量労働制の業務範囲を明確化・高度プロフェッショナル制度における健康確保措置を強化)
(2) 勤務間インターバル制度の普及促進等 労働時間等
設定改善法
(2019年4月1日)
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならないこととする。
(3) 産業医・産業保健機能の強化 労働安全衛生法等
(2019年4月1日)
事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。
3 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(1) 不合理な待遇差を解消するための規定の整備 パートタイム労働法
労働契約法
(2019年4月1日
但し、中小企業は
2020年4月1日)

労働者派遣法
(2019年4月1日)
短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。
併せて有期雇用労働者の均等待遇規定を整備。
派遣労働者について、以下を義務化。また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。
(a)派遣先の労働者との均等・均衡待遇
(b)一定の要件※を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保すること
同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等
(2) 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
(3) 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
(1)の義務や(2)の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備。

この要綱を踏まえて法律案が作成され、今月28日より招集される臨時国会で審議される予定でしたが、衆議院解散の可能性が高くなったため、国会での審議が遅れ、実際に法案が成立して施行される時期は上表の予定よりも遅れる可能性があります。
施行される時期は変更になる可能性があるものの、「働き方改革実行計画」に沿った形で進行している状況に変わりはありませんので、特に、2(1)①の時間外労働の上限規制への対応や、3(1)のいわゆる正社員と正社員以外との不合理な待遇差を解消することへの対応等の時間を要する課題については、法律改正を睨んで早めの検討着手が必要だといえます。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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