近年増えている「企業名の公表」の仕組み

2016年7月27日

労働法において、法改正の時などに新たに導入される仕組みとして近年よくみられるのが「企業名の公表」です。労働法の中には、労働基準法など法律に違反した場合に罰則(刑罰)が設けられているものもありますが、パートタイム労働法など罰則が設けられていないものもあります。罰則が設けられていない場合には、法律を遵守させるための強制力がありません。そこで、実効性を確保するために、法律を遵守しない企業への制裁として「企業名の公表」の仕組みが導入されています。

企業名が公表される場合とは

企業名はどのような場合に公表されるのでしょうか。労働法における導入例をご紹介しましょう。

・障害者雇用促進法
障害者雇用促進法では、法定雇用率を定めて障害者の雇用を義務づけていますが、障害者の雇用数が一定水準を満たさず勧告に従わない場合に企業名が公表されます。これまで、毎年定期的に企業名が数社公表されてきましたが、平成27年度は公表の基準に該当する企業はなかったようです。
・男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法では、当該法律に違反し勧告に従わない場合に企業名が公表されます。初の公表は平成27年9月に行われており、妊娠を理由に女性労働者を解雇しそれを撤回しなかった企業が対象となっています。
この他、育児介護休業法、パートタイム労働法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、労働安全衛生法、職業安定法等でも企業名の公表の仕組みが導入されています

ブラック企業対策でも

企業名の公表はブラック企業対策としても活用されています。これは、法律に基づくものではありませんが、平成27年5月18日付で各労働局長宛てに「違法な長時間労働を繰り返し行う企業の経営トップに対する都道府県労働局長による是正指導の実施及び企業名の公表」が通知され、違法な長時間労働を繰り返した場合に企業名が公表される仕組みが導入されました。具体的には、社会的に影響力の大きい企業(複数都道府県に事業場がある大企業)において、違法な長時間労働(100時間超の時間外等)が相当数の労働者(1事業場10人以上等)に認められ、一定期間内に複数の事業場(概ね1年以上の期間に3ヵ所以上の事業場)で繰り返されている場合を対象とするもので、導入1年後の平成28年5月に初の公表が行われています。

企業名が公表される仕組みがなくても、法律を遵守することは企業に当然に要請されるものですが、企業名が公表された場合の社会的評価の毀損等のリスクも踏まえ、法律に違反しない体制の整備が求められます。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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