男女の賃金の差異の情報公表
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女性活躍推進法関連の改正が行われ、女性の活躍に関する情報に関して公表すべき項目が追加されました。今回は、その概要をご紹介します。
女性活躍に関する情報公表
女性活躍推進法では、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するため、常時雇用する労働者が101人以上の事業主は、その事業等における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表しなければならないとしています。
公表しなければならない項目は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、以下のグループ1及びグループ2のそれぞれから1項目以上(計2項目以上)、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主はグループ1及びグルプ2のすべての項目の中から1項目以上です。
■グループ1
働きがいに関する実績(女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供)- ・採用した労働者に占める女性労働者の割合
- ・男女別の採用における競争倍率
- ・労働者に占める女性労働者の割合
- ・係長級にある者に占める女性労働者の割合
- ・管理職に占める女性労働者の割合
- ・役員に占める女性の割合
- ・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績
- ・男女別の再雇用又は中途採用の実績
■グループ2
働きやすさに関する実績(職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備)- ・男女の平均継続勤務年数の差異
- ・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
- ・男女別の育児休業取得率
- ・労働者の1月当たりの平均残業時間
- ・雇用管理区分ごとの労働者の1月当たりの平均残業時間
- ・有給休暇取得率
- ・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
公表項目の追加
改正後は、常時雇用する労働者が301人以上の事業主については、「男女の賃金の差異」が公表項目に追加され、計3項目以上を公表しなければなりません。
なお、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主は、「男女の賃金の差異」も含めたすべての項目の中から1項目以上公表すればよいことになっています。
「男女の賃金の差異」とは
「男女の賃金の差異」とは、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合で示したものをいい、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で公表が必要になります。
計算方法と情報公表のイメージは以下のとおりです(厚生労働省公表資料より)。なお、「男女の賃金の差異」の数値だけでは伝えきれない実情を説明するため、事業主の任意で、より詳細な情報や補足的な情報を追加して公表する対応も可能です。
いつから?
今回の改正は2022年7月8日から適用され、「男女の賃金の差異」の公表は、改正施行日(2022年7月8日)後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3ヵ月以内に行う対応が求められています。
したがって、例えば、3月決算の会社であれば、2023年3月期の実績を、2023年6月末までに公表する対応が必要になります。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。