第14回 財務計画作成の詳細

2025年2月26日
第14回 財務計画作成の詳細

【5分で納得コラム】今回のテーマは、「財務計画作成の詳細」です。

FP&Aの重要な役割の一つに、ビジネスパートナーとしての機能があります。FP&Aは単なる財務データの提供者ではなく、積極的に事業運営に関与し、意思決定を支援する役割を担っています。その一環として、財務計画の策定が求められます。第5回では、財務計画の作成手順の概要を解説しました。今回は、財務計画作成の詳細について解説します。

第14回 財務計画作成の詳細

1. 財務計画の作成方法

財務計画は売上高から順番に作成する方法(第1法)と当期純利益から逆算して作成する方法(第2法)があります。これらは、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットが存在します。以下ではこの2つの方法について解説します。

(1) 第1法

売上高から順番に事業計画を作成する方法は、企業の営業活動や市場分析に基づいて売上高を予測し、その売上高を起点として費用、利益を計算する方法です。この方法はトップダウン型のアプローチとも呼ばれ、市場シェア拡大を目指す成長期の企業や新規事業や新製品の導入に伴い、売上高の拡大が優先される場合に適用され、一般的に利用されています。

① 作成手順

(A)市場分析と売上予測
市場規模、成長率、競合状況などを調査し、ターゲット市場での売上を予測します。また、過去の売上データやトレンドを参考にしつつ、新製品やサービスの導入効果も加味します。

(B)売上高の設定
予測データをもとに、売上高目標を具体的な数値として設定します。

(C)コスト構造の分析
変動費(製品製造コストや直接的なサービス提供費用)と固定費(人件費、設備費用など)を明確に分けて分析します。販売費及び一般管理費の作成パターンは以下が考えられます。
・勘定科目レベルで作成する方法
・事業に直接関連する勘定科目で分類し作成する方法(事業に直接関連しない本社費は、配賦基準を設定するか、各事業部の営業利益の合計から控除する)
・大分類(売上原価、営業・マーケティング費、研究開発費、一般管理費)で作成する方法

(D)利益の計算
売上高から変動費と固定費を差し引き、営業利益を算出します。また、営業利益から支払利息などの金融費用や税金を考慮し、最終的な当期純利益を計算します。

(F)キャッシュフローの予測
売上高に基づき、キャッシュの入出を予測します。特に運転資金や設備投資の計画も含める必要があります。

② メリット

売上予測が市場分析に基づくため、計画が現実的である可能性が高いため、市場状況を反映することができます。また、目標売上高が明確であり、営業活動の指針を提供するため、営業目標が明確になります。さらに、売上から順次計算していくため、計画の論理構造が分かりやすく、計画の透明性が確保されます。

③ デメリット

売上目標が達成されても、費用管理が不十分であれば利益が確保できないリスクがあります。また、売上を追求しすぎて、採算性が軽視される可能性があります。

(2) 第2法

当期純利益から逆算して事業計画を作成する方法は、目標とする純利益を設定し、その目標を達成するために必要な売上高や費用構造を逆算する方法です。この方法はボトムアップ型のアプローチとも呼ばれ、成熟期の企業で、利益率向上や株主価値の最大化が求められる場合や資金調達計画やM&Aなど、収益性が重要視されるプロジェクトで適用されることがあります。

① 作成手順

(A)目標純利益の設定
企業の成長戦略や株主還元政策、資本コストを考慮して、目標純利益を設定します。

(B)税金・金融費用の計算
 設定した純利益から、税金や金融費用を逆算し、営業利益目標を算出します。

(C)固定費と変動費の設定
 固定費を現状の費用構造から算定し、必要な変動費を検討します。

(D)必要売上高の逆算
営業利益目標に基づき、必要な売上高を逆算します。利益率を加味し、売上総利益や売上高を算出します。

(E)計画の具体化
逆算した売上高が実現可能かどうかを市場分析や営業戦略を通じて確認します。実現可能性を高めるため、コスト削減策や収益性向上策も検討します。

(F)キャッシュフローの予測
売上高に基づき、キャッシュの入出を予測します。特に運転資金や設備投資の計画も含める必要があります。

② メリット

目標純利益が計画の基礎となるため、収益性を重視した計画が立てられることから、利益目標が明確化されます。また、必要な費用削減や効率化が計画に組み込まれるため、財務体質の改善につながります。さらに、利益重視の計画は、株主や投資家への説明がしやすいものとなります。

③ デメリット

必要売上高が現実的でない場合、計画が非現実的になるリスクがあります。また、目標利益を重視するあまり、市場の変化や競争環境への対応が後手に回り、市場変化への対応が遅れる可能性があります。

表1 第1法と第2法の比較

項目 売上高から順番に
作成する方法(第1法)
当期純利益から
逆算する方法(第2法)
重視するポイント 市場規模、売上拡大 収益性、利益目標
計画の柔軟性 市場動向に応じて柔軟 利益目標に基づき硬直的な場合がある
適用シーン 成長期、新規事業 成熟期、収益重視
メリット 売上目標が明確 利益目標が明確
デメリット 利益が確保できないリスク 売上が達成できないリスク

執筆陣紹介

仰星コンサルティング株式会社

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