専門業務型裁量労働制とは?
2024年4月からの施行が予定されている見直し内容をまとめました

2023年2月22日
無期転換ルールに関する見直し ~明示義務の追加など~

【5分で納得コラム】今回のテーマは「専門業務型裁量労働制」です。

1. 専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示により定められた以下の19業務に従事する者が対象になり得るもので、労使で対象となる業務を定める等の手続きを行って、労働者を当該業務に従事させた場合に、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

  • ① 新商品・新技術の研究開発又は人文科学・自然科学に関する研究の業務
  • ② 情報処理システムの分析又は設計の業務
  • ③ 新聞・出版の事業における記事の取材・編集の業務又は放送番組の制作のための取材・編集の業務
  • ④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  • ⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  • ⑥ コピーライターの業務
  • ⑦ システムコンサルタントの業務
  • ⑧ インテリアコーディネーターの業務
  • ⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  • ⑩ 証券アナリストの業務
  • ⑪ 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  • ⑫ 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
  • ⑬ 公認会計士の業務
  • ⑭ 弁護士の業務
  • ⑮ 建築士の業務
  • ⑯ 不動産鑑定士の業務
  • ⑰ 弁理士の業務
  • ⑱ 税理士の業務
  • ⑲ 中小企業診断士の業務

例えば、専門業務型裁量労働制を適用する者について労使であらかじめ「9時間」働いたものとみなす定めをした場合は、実際は、12時間働いた日でも、4時間しか働かなかった日でも、どちらの日も「9時間」働いたものとして取り扱う対応になります。

2. 導入のための手続き

専門業務型裁量労働制を導入するためには、次の事項を労使協定で定めた上で、協定届(様式第13号)を所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。

  • ① 制度の対象とする業務
  • ② 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  • ③ 労働時間としてみなす時間
  • ④ 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  • ⑤ 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  • ⑥ 協定の有効期間
  • ⑦ ④⑤に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

3. 2024年4月からの見直し

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制のほかに企画業務型裁量労働制がありますが、当該制度が不正に適用されている例が注目されたことや、裁量労働制に関する不適切なデータを用いて国会答弁がなされたことなどを背景に、2019年に裁量労働制の適用・運用実態の調査が行われ、それらの結果を踏まえて、2021年より、労使双方にとって有益な制度となるようこれからの労働時間制度について検討がなされてきました。

そして、その結果、2024年4月から裁量労働制について一部見直しが予定されています。予定されている見直し内容から専門業務型裁量労働制に関する部分を抜粋すると、以下になります。

  • □ 労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保のための見直し
    • ✓ 制度適用にあたり本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加する
    • ✓ 同意の撤回の手続を協定事項に追加する
  • □ 労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保のために
    • ✓ 健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存する
  • □ 厚生労働大臣告示に基づく専門業務型裁量労働制の対象業務の追加
    • ✓ 銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務を対象とする

裁量労働制を導入している企業においては、これから発信されるであろう2024年4月からの見直し内容の詳細を含めた情報を確認の上、それへの対応が必要になります。特に、すでに企画業務型裁量労働制には適用されている制度適用時の本人同意が専門業務型裁量労働制にも導入されますので、同意しない場合や一度同意した者がそれを撤回した場合の対応も含めて、今後の取扱いを検討する必要があるでしょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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