男性の育児休業の取得促進に向けて
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【5分で納得コラム】今回は、「男性の育児休業取得促進」について解説します。
男性の育児休業の取得促進に向けて
1. 育児休業取得率
厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、令和2年10月1日から令和3年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、令和4年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は80.2%、また、同1年間に配偶者が出産した男性のうち、令和4年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は17.13%となっています。男性の育児休業取得率は以下グラフのとおり増えつつあるものの、女性の8割に比べると、4分の1に満たない程度の低い水準になっています。
■男性の育児休業取得率の推移
*「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)より
2. 男性の育児休業等の取得割合の公表義務対象
このような状況の中、男性の育児休業の取得を促進するため、令和4年4月からは妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対する育児休業制度の個別周知や取得意向の個別確認及び育児休業を取得しやすい環境整備を義務化したり、令和4年10月からは「産後パパ育休(出生児育児休業)」の休業制度を創設したりするなどしてきました。
また、令和5年4月からは、常時雇用する労働者数が1000人超の企業を対象に、男性の育児休業等の取得割合(以下の①又は②のいずれか)を年に1回公表することを義務付けました。
①育児休業等の取得割合 ②育児休業等と育児目的休暇の取得割合 育児休業等をした男性労働者の数
配偶者が出産した男性労働者の数育児休業等をした男性労働者の数
+
小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数
の合計数
配偶者が出産した男性労働者の数そして、本年5月に国会で可決・成立した改正育児介護休業法により、令和7年4月1日からは、男性の育児休業等の取得割合を公表する義務対象を、常時雇用する労働者数が「1000人超の企業」から「300人超の企業」に拡大することを決定しています。
なお、公表は、事業年度ごとに事業年度終了後おおむね3ヵ月以内に実施することを求めていますので、例えば300人超1000人以下の3月決算の企業であれば、令和7年3月期の男性の育児休業等の取得割合を令和7年6月末日までを目安に公表する対応が必要になります。
3. 新しい給付の創設
男性の育児休業の取得が進まない要因のひとつに、育児休業中、雇用保険からの給付を受けられたとしても、休業前より収入が減少してしまう点があげられるでしょう。
そこで、両親ともに育児休業を取得することを促進するため、本年6月に国会で可決・成立した改正雇用保険法により、令和7年4月1日からは、雇用保険の新しい給付「出生後休業支援給付」を創設することを決定しています。
「出生後休業支援給付」は、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、雇用保険の被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、被保険者の休業期間について、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額を支給するものです。なお、配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに支給されます。
これにより、育児休業中の社会保険料免除の仕組みも踏まえると、以下のとおり、手取りベースで休業前とほぼ同等の給与水準が維持されるイメージになります。
■両親ともに育児休業を取得した場合の給付イメージ
*「子ども・ 子育て支援法等の一部を改正する法律案の概要」(厚生労働省)より
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。