【令和5年度最新】労働保険の年度更新
~例年と異なる取扱い~
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「労働保険の年度更新」です。
労働保険の年度更新~例年と異なる取扱い~
1. 労働保険の年度更新とは
労災保険と雇用保険の保険料を合わせた労働保険の保険料(労働保険料)は、毎月納付する方法ではなく、保険年度(4月1日から翌年3月31日までの1年間をいいます。)ごとに1回、6月1日から7月10日までの間に、“前年度の確定保険料”と“新年度の概算保険料”を申告して納付する方法がとられています。これを「労働保険の年度更新」といいます。
令和5年度の場合であれば、令和4年度の確定保険料と令和5年度の概算保険料を、2023年(令和5年)6月1日から7月10日までの間に申告して納付します。
◆ 令和5年度の労働保険の年度更新
なお、労働保険料の申告・納付が適切になされない場合は、10%の追徴金が課されることがあります。
2. 労働保険料の算出方法
労働保険料(労災保険料・雇用保険料)は、各保険年度において労働者に支払われる賃金の総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて算出します。なお、雇用保険料は労働者のうち雇用保険の被保険者に支払われる賃金の総額に基づき算出します。
労災保険料 = 保険年度において労働者に支払われる賃金の総額×労災保険料率
雇用保険料 = 保険年度に労働者(被保険者)に支払われる賃金の総額×雇用保険料率
前年度の確定保険料は、前年度の賃金の総額の”実績”に基づき計算しますが、これは1年度前に概算保険料として申告したものを精算する手続きになります。
新年度の概算保険料は、新年度の賃金の総額の”見込額”に基づき計算しますが、前年度と比較して賃金の総額が大幅に変動する(前年度の2分の1未満又は2倍を超えることが見込まれる)状況が想定されない限り、前年度の賃金の総額の”実績”を新年度の賃金の総額の”見込額”とします。
3. 例年と異なる取扱い
例年の労働保険の年度更新においては、保険年度である1年分の賃金の総額を集計して、その額に保険料率を乗じて労働保険料(労災保険料・雇用保険料)を算出しますが、令和4年度については、下表のとおり雇用保険料率が保険年度の途中で変更されるという異例の改正がなされたため、雇用保険料に関する令和4年度の確定保険料については、1年分の賃金の総額ではなく、2022年(令和4年)4月1日から2022年(令和4年)9月30日までの賃金の総額と、2022年(令和4年)10月1日から2023年(令和5年)3月31日までの賃金の総額をそれぞれ集計し、それらに対象期間に応じた雇用保険料率を乗じてからそれを合計する方法で算出する必要があります。
◆ 令和4年度の雇用保険料率
例)一般の事業の場合
雇用保険料に関する令和4年度の確定保険料=①+②- ① 2022/4/1~2022/9/30に労働者(被保険者)に支払われる賃金の総額×9.5/1000
- ② 2022/10/1~2023/3/31に労働者(被保険者)に支払われる賃金の総額×13.5/1000
給与計算システム導入企業において当該システムで労働保険料を算出する場合は、上記を踏まえた内容で自動計算される仕組みになっているでしょうから特に意識することはないと思われますが、例年とは少し算出方法が異なりますのでご注意ください。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。