「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等のご紹介

2024年2月8日
「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等のご紹介

【5分で納得コラム】今回は、「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等のご紹介をします。

1. はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2023年12月15日、企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等(以下「本公開草案」という。)を公表しました。
改正金融商品取引法により、第1・第3四半期報告書が廃止され、第2四半期報告書が半期報告書となるためです。

2. 範囲

本公開草案は、以下の会社が半期報告制度に基づき作成する中間財務諸表に適用します。

(1) 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(以下「金融商品取引法」という。)第24条の5第1項の表の第1号に掲げる上場会社等

(2) 金融商品取引法第24条の5第1項ただし書きにより、同項の表の第1号に掲げる上場会社等と同様の半期報告書を提出する第3号に掲げる非上場会社

3. 基本的な方針

本公開草案では、半期報告書で開示される中間財務諸表に係る会計処理と開示の取扱いを定めており、基本的に四半期会計基準等の会計処理と開示の取扱いを引き継いでいます。

4. 本公開草案で個別に検討したもの

上記の基本的な方針の下、四半期決算の会計期間(3か月)と中間会計期間(6か月)の相違により、会計処理に差異が生じる可能性がある以下の項目については、従来の四半期での実務が継続して適用可能となる取扱いを提案しています。このうち、以下の①~④については経過措置が定められているため、その内容をご紹介します。

会計処理に差異が
生じる可能性
経過措置を提案 ① 有価証券の減損処理に係る中間切放し法(本適用指針案第4項)
② 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法(本適用指針案第7項)
③ 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理(本適用指針案第3項)
④ 未実現損益の消去における簡便的な会計処理(本適用指針案第28項)
従来の四半期の実務が継続可能 ⑤ 原価差異の繰延処理(本会計基準案第17項)
⑥ 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(本会計基準案第20項)

① 有価証券の減損処理に係る中間切放し法

企業会計基準適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「四半期適用指針」という。)第4項に基づいて、四半期切放し法を適用していた場合、中間会計期末における有価証券の減損処理について、第1四半期の末日において切放し法を適用したものとして中間会計期末において切放し法を適用することができます(本適用指針案第62項)。

② 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法

四半期適用指針第7項に基づいて切放し法を適用していた場合、棚卸資産の簿価切下げについて、第1四半期の末日において切放し法を適用したものとして中間会計期末において切放し法を適用することができます(本適用指針案第63項)。

③ 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理

第1四半期の貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、第1四半期の貸倒実績率等の合理的な基準を使用して中間会計期間末における一般債権に対する貸倒見積高を算定することができることができます(本適用指針案第61項)。

④ 未実現損益の消去における簡便的な会計処理

第1四半期から取引状況に大きな変化がないと認められる場合には、連結会社相互間の取引によって取得した棚卸資産に含まれる中間会計期間末における未実現損益の消去について、第1四半期における損益率を使用して計算することができます(本適用指針案第64項)。

なお、他基準の修正等は提案されておらず、文言の読み替えによる対応となります。

5. 適用時期等

本公開草案では、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則第3条に基づき、改正後の金融商品取引法第24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間からの適用を提案しています。なお、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等の適用は終了されない予定であることにご留意ください。


・企業会計基準委員会HP
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2023/2023-1215.html

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仰星監査法人

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