令和2年度税制改正大綱【法人課税】
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1.令和2年度税制改正大綱の公表
自由民主党と公明党の両党は令和元年12月12日に令和2年度税制改正大綱を公表しました。今回は法人課税について取り上げます。今回の税制改正大綱の基本的な考え方では、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投資や賃上げを促すための税制上の措置を講ずるとともに、連結納税制度の抜本的な見直しが検討されています。
2.法人課税改正項目一覧
財務省は令和2年度税制改正大綱の概要として、法人課税について以下のようにまとめています。
項目 概要 1 オープンイノベーションに係る措置 事業会社から一定のベンチャー企業に対する出資について、その25%相当額の所得控除ができる措置を創設する。その際、一定期間(5年)内に、出資した株式を売却等した場合には、対応する部分の金額を益金に算入する仕組みとする。 2 投資や賃上げを促す措置 ・収益が拡大しているにもかかわらず賃上げにも投資にも消極的な大企業に対する研究開発税制などの租税特別措置の適用を停止する措置の設備投資要件について、国内設備投資額が当期の減価償却費総額の3割超(現行:1割超)とする。・大企業に対する賃上げ及び投資の促進に係る税制の設備投資要件について、国内設備投資額が当期の減価償却費総額の95%以上(現行:90%以上)とする。 3 連結納税制度の見直し ・連結納税制度について、企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位としつつ、損益通算等の調整を行う仕組みとする。(グループ通算制度への移行)・地方税においては、現行の基本的な枠組みを維持しつつ、国税の見直しに併せて所要の措置を講ずる。 4 地方拠点強化税制の見直し ・地方拠点強化税制における雇用促進に係る措置について、移転型事業の上乗せ措置における雇用者1人当たりの税額控除額を3年間で最大120万円(現行:90万円)に拡充する。 5 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の見直し ・地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)について、手続の抜本的な簡素化・迅速化を図るほか、税額控除割合を現行の3割から6割に引き上げる。 (出所:財務省ウェブページより著者作成)
その他、5G導入促進税制や電気供給業に係る法人事業税の課税方式の見直しが検討されています。
※今後の法案審議において、適宜修正等がされる可能性があります。
3.連結納税制度の見直しについて
現行の連結納税制度から、企業グループ内の各法人を納税単位としつつ、損益通算等の調整を行うグループ通算制度への移行が検討されています。 簡単な設例で現行制度との比較を行うと下記のとおりです。
(現行の連結納税制度)
A社(親法人) B社(子法人) C社(子法人) D社(子法人) 連結 所得金額 所得 600 所得 300 欠損 ▲250 欠損 ▲50 – (1)所得及び欠損を合算し、連結所得を計算する。 – – – – 600 (2)税額計算(税率は30%とする) – – – – 180 親法人にて、グループの連結課税所得を計算し、それに税率を乗じた金額をグループ一体としての税額として申告します。
(グループ通算制度)
A社(親法人) B社(子法人) C社(子法人) D社(子法人) 所得金額 所得 600 所得 300 欠損 ▲250 欠損 ▲50 (1)所得と欠損をそれぞれ合算する。 所得 900 欠損 ▲300 (2)欠損を所得の割合で配分する。(損益通算) ▲200 (=▲300×600÷900) ▲100 (=▲300×300÷900) 所得金額 400 200 ゼロ ゼロ 税額計算(税率は、30%とする) 120 (=400×30%) 60 (=200×30%) ゼロ ゼロ 改正後のグループ通算制度では、各法人で所得・税額計算及び申告することを前提としています。損益通算の方法は、欠損を所得が発生している法人に所得の割合で配分することが検討されています。
4.まとめ
本稿では令和2年度税制改正大綱における法人課税について、とりわけ連結納税の見直しについてとりあげました。現行の連結納税制度の問題点としては、子法人の税務情報を親法人に集約し、親法人がグループ一体として申告を行う方式であるため、法人間の連絡・事務作業が煩雑であり、また、子会社の税務調査等で申告額に誤りがあった場合に、グループ全体で修更正にかかる事務負担が非常に大きいという指摘がありました。こうした指摘を受けて、制度の簡素化による事務負担の軽減を意図し、改正が検討されています。
執筆陣紹介
- 仰星監査法人
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仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。