電子帳簿保存法一問一答(Q&A)令和6年6月改訂の概要
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【5分で納得コラム】
今回は「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)令和6年6月改訂の概要」について解説します。電子帳簿保存法一問一答(Q&A)令和6年6月改訂の概要
1. はじめに
電子帳簿保存法一問一答(Q&A)が令和6年6月版に改訂され、6月28日付で、国税庁サイトで公表されました。
「電子帳簿・電子書類関係」「スキャナ保存関係」「電子取引関係」それぞれに改訂がありますが、今回は、実務上、より情報の有用性が高いと考えられる「電子取引関係」について、追加された設問の概要をご紹介したいと思います。
2. 「電子取引関係」の改訂の概要
(1)制度の概要
問2-2
従業員を雇用する際、賃金や労働時間等の労働条件を記載した「労働条件通知書」データを電子メールに添付して相手方に送信し、また、クラウドサービスを利用して「雇用契約書」の授受を行った場合、この「労働条件通知書」データや「雇用契約書」データは電子取引データとして保存する必要がありますか。
【回答】
従業員の雇用に際して相手方に交付する「労働条件通知書」や相手方との間で取り交わす「雇用契約書」には、通常、契約期間、賃金、支払方法等に関する事項等が記載されており、法第2条第5号((定義))に規定する取引情報に該当します。その取引情報の授受を電子メールなどの電磁的方式により行う場合には、電子取引に該当しますので、その電子取引データを保存する必要があります。
問9-2
インターネットバンキングを利用した振込等も電子取引に該当し、振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等が記載されたデータの保存が必要とのことですが、金融機関のオンライン上の通帳や入出金明細等による保存も可能でしょうか。
【回答】
金融機関のオンライン上の通帳や入出金明細等による保存も可能です。
インターネットバンキングを利用した振込等の電子取引のデータの保存方法
・インターネットバンキングを利用した振込等に係る取引年月日・金額・振込先名等が記載されたデータについては、そのデータ(又は画面)をダウンロードする又は印刷機能等によってPDFファイルを作成するなどの方法により保存する。
・金融機関のオンライン上の通帳や入出金明細等による保存も可能(※1、2)。
(※1)1件の振込等において振込先が複数あるときは、各振込先・振込金額を確認できる書類等の保存が必要。
(※2)オンライン上の通帳等の確認が随時可能な状態であるときは、必ずしもオンライン上の通帳等をダウンロードして保存していなくても差し支えない。
(2)保存方法
問27-2
当社では、電子取引の取引情報に係る電磁的記録(電子データ)と書類(紙)が取引において混在しています。電子データ自体の保存は電子帳簿保存法上の保存要件に沿って適切に対応していますが、電子メール等一定の電子データについては、経理事務の便宜のため、書面に印刷してその他の書類と一緒にファイルに綴り整理しています。このような保存方法を採用して問題ないですか。
【回答】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録を削除せず、電子帳簿保存法の保存要件に沿って保存した上で、当該電磁的記録を書面に出力し、その他の書類と一緒に整理することは、問題ありません。
問40-2
ECサイトで物品を購入したとき、ECサイト上の購入者の購入情報を管理するページ内において、領収書等データをダウンロードすることができる場合に、領収書等データを必ずダウンロードして保存する必要がありますか。
【回答】
当該ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えありません。
ECサイト上で領収書等データの保存方法等
ECサイト上で領収書等データの取引情報を確認することができるようになった時点で取引情報の受領があったものとして、物品の購入者は、その領収書等データを保存する必要がある(※1、2)。
(※1)当該ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えない。
(※2)上記の取扱いは、ECサイト提供事業者が、電子取引に係る保存義務者(物品の購入者)において満たすべき真実性の確保及び検索機能の確保の要件を満たしている場合に受けることが可能(※3)。
(※3)判定期間に係る基準期間の売上高が 5,000 万円以下の事業者又は電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている事業者については、全ての検索機能の確保の要件が不要とされることから、ECサイト上の購入者の購入情報を管理するページ内において、検索機能の確保がなされている必要はない。
問40-3
高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、消費税法上、クレジットカード会社から受領するクレジットカ―ド利用明細書と利用した高速道路会社などの任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えない取扱いとなっていますが、電子帳簿保存法上はどのような取扱いとなりますか。
【回答】
ETCの利用証明書については、納税者が必要に応じて自ら必要な範囲を指定してウェブ上で発行してもらうものであり、必ずしも利用証明書の全てを納税者が受領しているものではないため、所得税法及び法人税法上、このように、納税者が受領していない利用証明書についてまで、あえて発行を受け、ダウンロードして保存する必要はありません。
ただし、消費税法における仕入税額控除を適用するために、任意の一取引に係る利用証明書の発行を受けた(ダウンロードした)場合には、その利用証明書自体は取引に関して受領した書類に該当することから、これを電子帳簿保存法の要件を満たして保存する必要があります。
(3)その他
問69
当方は公益法人ですが、法人税法上の収益事業を行っており、青色申告の承認を受けて、法人税の申告をしています。電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、収益事業に係る取引に関するものだけを保存しておけばいいのでしょうか。
それとも、収益事業を含む全ての事業の取引に関する電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないのでしょうか。
また、青色申告法人以外の公益法人である場合はどうなるでしょうか。【回答】
公益法人等が青色申告法人である場合、収益事業を含む全ての事業の取引に関する電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存する必要があります。他方、青色申告法人以外の公益法人等である場合、収益事業に関する電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすれば足りることになります。
(凡例)
法:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
(参考情報)
・(国税庁HP)電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和6年6月)】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。