「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」の公表について
-
【5分で納得コラム】今回は「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」の公表について解説します。
「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」の公表について
1. はじめに
金融庁は、2024年12月5日、「サステナビリティに関する考え方及び取組の開示②(気候変動等)」をテーマに、「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」を公表しました。
金融庁では、開示の充実化に向けた実務の積上げ・浸透を図る取組として、2018年から毎年、「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」(以下「勉強会」)を実施した上で、「記述情報の開示の好事例集」を公表、更新しています。
前回の第1回勉強会に引き続き、今回は、第2回勉強会で議論された内容をご紹介します。第2回勉強会では、主に「気候変動関連等」として、気候変動、自然資本(水リスク、生物多様性等)の事例が追加されました。前回の内容については、『「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表について』(2024年12月12日掲載)をご覧ください。
2. 有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の開示例
第2回勉強会では「気候変動関連等」として、気候変動、自然資本(水リスク、生物多様性等)についての開示例が追加されました。
2023年3月期から有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示が義務化されたことや、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が日本版S1プロジェクト及び日本版S2プロジェクトの確定基準を2025年3月31日までに公表すること等、気候関連を中心としたサステナビリティ情報開示の重要性は近年高まってきております。
以下は、好事例として紹介されている「気候変動関連等」の主な開示のポイントです。
気候変動等 ・「サステナビリティに関する考え方及び取組」の4つの構成要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)間でのストーリー性の構築や、「経営方針等」及び「事業等のリスク」との関連に加え、サステナビリティ情報と財務情報とのつながりがある開示 をすることも重要であり、例えば、インターナルカーボンプライスを使うことによって GHG 排出量を財務と関連付けることが考えられる
・サステナビリティ情報の中で特に着目しているのは機会の記載であるため、リスクだけではなく機会について開示することが有用。具体的には、以下のような記載が挙げられる
・どのような事業機会があるのか
・事業機会をどのように生かすのか
・どのように環境変化に対応するのか
・事業機会を生かすため、また、環境変化に対応するためのキャピタルアロケーションについてどのように考えているのか”・気候変動等の影響による中長期的な見通しだけではなく、実際の取組みや具体的な対応策、進捗の実績を開示することが有用
・シナリオ分析においては、一般的なシナリオだけではなく、自社の置かれている経営環境等を踏まえた独自のシナリオを反映した分析を行うことが有用
・財務影響が定量的に開示されないと、リスクと機会の各項目を合計した全体的な影響を把握することができないため、財務影響を定量的に開示することが重要であり、定性的な開示を行う場合には、全体的な影響や合計についても開示することが有用
・財務的な影響額に加え、時間軸についても開示することが有用。加えて、時間軸の定義と戦略的意思決定に用いる計画期間との関係を開示することはより有用
・サステナビリティ情報における指標は、他社との比較可能性に加え、自社における時系列での比較可能性も重要になるため、過去実績を含めた長期時系列での変化を開示することが有用
・気候変動に関する指標及び目標では、GHG排出量だけではなく、目標の達成のために経営者や取締役会が進捗を測定している指標についても開示することが有用
・TNFDに基づく開示では「依存」に着目しており、「影響」のインパクトの開示も使いながら財務影響を開示することが有用
金融庁:「記述情報の開示の好事例集2024(第2弾)」の公表
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20241205.html
執筆陣紹介
- 仰星監査法人
-
仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
-
≪仰星監査法人の最近のコラム≫
※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。