「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表について
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【5分で納得コラム】
今回は「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表について解説します。内容
「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表について
1. はじめに
金融庁は、2024年11月8日、「サステナビリティに関する考え方及び取組の開示①(全般的要求事項、個別テーマ)」をテーマに、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」を公表しました。
金融庁では、開示の充実化に向けた実務の積上げ・浸透を図る取組として、2018年から毎年、「記述情報の開示の好事例に関する勉強会」(以下「勉強会」)を実施した上で、「記述情報の開示の好事例集」(以下「好事例集」)を公表、更新しています。
今後、第2回勉強会以降のテーマを追加して、公表、更新することを予定していますが、今回は、第1回勉強会で議論された内容をご紹介します。
2. 投資家・アナリスト・有識者が期待する開示を充実化させるための取組み
ポイントは、関連当事者間の連携を行うこと、また開示タイミングを見直し、英語での情報発信を行うことです。
開示を充実化させるための取組み ・開示検討の初期段階からCEOやCFO、経理部等が連携し、開示に関する取組みを推進することが充実した開示を行うにあたり重要
・開示に前向きな企業であることを示す方策としては、開示タイミングの見直しを行い、有価証券報告書を株主総会前に開示することも有用
・海外投資家向けに、日本語だけではなく、英語での情報発信も行うことが重要3. 有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の全般的な開示のポイント
ここでのポイントは、経営陣の意向を示し、活動の結果や活動の過程で何に貢献しようとしているのかについて開示することです。
全般 ・サステナビリティ開示は中長期の経営戦略であることから、経営陣やガバナンスによるリーダーシップの発揮、経営者の意思表示、経営陣の意向を示すことが重要。具体的には、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」のセクションと、「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションが連携することが挙げられる
・サステナビリティに関する活動内容の記載だけではなく、活動の結果や活動の過程で何に貢献しようとしているのかについて開示することは有用
・重要なサステナビリティ指標に関する実績について、第三者保証を受けていることを開示することで、正しいデータや記述を行うため取組みを行っていることを示すことができるため、信頼性確保の観点において有用
・同じ用語であっても、企業と投資家で考え方に違いがあるものがあるため、用語を明確化することが重要。一例としては「マテリアリティ」が挙げられ、企業にとっての重要課題を意味する「マテリアリティ」と、財務・会計上において使用される業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある項目を意味する「マテリアリティ」の2つの意味で使用されている4. 有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の開示例
有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の「全般的要求事項」「個別テーマ」のポイントの一例として、ガバナンスにおいて、取締役会が経営陣をどのように監督しているか監督側についても記載することが重要です。また、企業理念や経営戦略にサステナビリティ戦略がどのように関わるかを開示することが有用です。以下は、好事例として紹介されている「全般的要求事項」「個別テーマ」のポイントになります。
全般的要求事項 ・ガバナンスでは、執行側の記載だけではなく、監督側についても記載することが重要
①監督側の記載としては、取締役会が経営陣をどのように監督しているかについて記載することが有用。具体的には、取締役会がサステナビリティ戦略をモニタリングするスキルを有しているか否かの記載や、取締役会等の監督機関への報告頻度、報告内容に加え、報酬制度を通じた経営者の評価について記載する
②執行側の記載としては、委員会等の位置付けや責任者、構成員に加え、議論の頻度や内容、サステナビリティ関連のリスクと機会の優先順位付けの方針について記載することが挙げられる
・サステナビリティは、ESGのEやSの取組みの延長ではなく、中長期的な将来キャッシュ・フローに影響を与えるリスクと機会に関する概念であることを理解したうえで、戦略のセクションでは、企業理念や経営戦略にサステナビリティ戦略がどのように関わるかを開示することが有用
・サステナビリティ関連のリスクと機会を識別するためのプロセスについて開示することは有用。加えて、SASBスタンダートを参照した記載とすることはより有用
・リスク管理では、サステナビリティ関連のリスクだけではなく、機会についても記載することが必要。具体的には、サステナビリティ関連のリスクと機会をどのように識別・評価し、優先順位をつけているのかについて開示することが挙げられる
・指標には比較可能な指標と独自指標があるが、なぜその指標を選定したか開示することが有用であり、独自指標の場合には、指標の定義を開示することが有用
・指標及び目標では、指標と目標に加えて、目標に対する実績、実績に対する評価及び目標の達成時期について記載することが有用個別テーマ ・重要なサステナビリティ項目については、TCFDの4つのコアコンテンツに基づき開示をすることで、リスク要因だけではなく、機会に関する取組みを行っていることを示す手段になるため有用
・知的財産は、企業価値の算定において重要な要素であり、知的財産について具体的に記載することは有用
金融庁:「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」の公表
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20241108.html
執筆陣紹介
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。