早期の介護の両立支援に関する情報提供
2025年4月1日から義務化
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【5分で納得コラム】
今回のテーマは「早期の介護の両立支援に関する情報提供」についてです。早期の介護の両立支援に関する情報提供2025年4月1日から義務化
1. 仕事と介護の両立支援の強化
超高齢社会の日本においては、仕事と介護の両立に迫られる者が増えていくことが想定されます。介護に直面したときに退職しか選択できないとすれば、企業を支える大切な人材が流出することになり、企業にとって大きな損失です。よって、仕事と介護を両立するための支援を充実させ、介護のために離職することがない仕組みづくりを推進していかなければなりません。
令和6年の育児介護休業法改正では、介護離職を防止するため、仕事と介護の両立支援を強化する仕組みがいくつか追加されています。そのひとつが、労働者に対して早期に介護に関する両立支援制度の情報提供を実施する新しい仕組み(義務)です。
2. 情報提供の時期
今回の情報提供は、次の①又は②のいずれかの時期に実施しなければなりません。
- ① 労働者が40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間
- ② 労働者が40歳に達した日の翌日から起算して1年間
家族の介護・看護を理由とする離職者は50歳~64歳で多い状況がみられます。よって、介護に直面する前の早い段階で介護に関する両立支援制度の内容を認識させることは有用といえるでしょう。
ちなみに、介護保険料の負担が始まるのも40歳になります。
3. 提供すべき情報
今回の仕組みで提供すべき情報は、次の①から③のすべての事項になります。
- ① 介護休業などの介護に関する両立支援制度の内容
- ② 介護休業などの介護に関する両立支援制度の申出先
- ③ 雇用保険の介護休業給付金に関すること
介護に直面した際にどのような支援制度があるのかをきちんと認識してもらい、少なくとも支援制度の内容やその利用方法に関する理解が不十分なために退職を選択させてしまうことは防がなければなりません。
4. 情報提供の方法
今回の情報提供は、次の①から④のいずれかの方法によって実施しなければなりません。
- ① 面談
- ② 書面の交付
- ③ ファクシミリを利用しての送信
- ④ 電子メール等の送信
なお、他の同様の情報提供が求められる仕組みにおいては、③又は④の方法は本人の希望がある場合にしか選択できませんが、今回の情報提供の仕組みにおいては、本人の希望の有無にかかわらず、③又は④の方法も選択することができます。
5. 施行日
今回の情報提供の規定は、2025年4月1日から施行されます。よって、それまでに対応準備が必要になります。
介護の問題にいつ直面することになるかについては予測ができません。介護に関する悩みを当事者1人で抱え込ませない環境づくりを推進し、介護を理由に離職することがない体制を整備していきましょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。