<2024年5月最新>定額減税の準備は進んでいますか?

2024年5月9日
<2024年5月最新>定額減税の準備は進んでいますか?

【5分で納得コラム】今回は、給与計算においての「定額減税」の準備について解説します。

1. 定額減税に関するQ&A

定額減税については以前のコラムでその概要をご紹介しましたが、迫る6月の給与計算事務に向けて準備を進める中で、さまざまな疑問が生じている頃ではないかと思われます。

その疑問を解決してくれる資料のひとつが、国税庁から出されている「令和6年分所得税の定額減税Q&A」です。当該Q&Aは、令和6年2月5日に出された後、2回の改訂が加えられ、現在は令和6年4月改訂版が最新となっています。

今回は、そのQ&Aの中から適用対象者などに関するものをいくつか抜粋してご紹介します。

2. 年収2000万以上は対象外?

定額減税は、合計所得金額が1,805万円以下の者を対象とするものであるため、年収でいえば2000万以上の者は定額減税の対象から除外してしまってよいと考えてしまいそうです。

しかし、定額減税の適用を受けない年収2000万以上の者も、令和6年6月の給与計算においてはその対象にしなければなりません。当該者については、令和6年6月の給与においては一旦減税対象となり、その後確定申告で精算する(減税された分を戻す)対応になります。これは、本人の希望の有無によりません。

なお、関連Q&Aの抜粋は以下のとおりです。

2-2 所得制限を超える人に対する定額減税

問 定額減税の適用には所得制限があるとのことですが、合計所得金額が 1,805 万円を超える人についても、主たる給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けるのですか。

[A]
合計所得金額が 1,805 万円を超える人であっても、主たる給与の支払者のもとでは、令和 6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税) の適用を受けることになります。
一方、合計所得金額が 1,805 万円を超える人については、年末調整の際に年調所得税額か ら行う控除(年調減税)の適用が受けられませんので、年末調整の際にそれまで控除した額 の精算を行うことになりますが、主たる給与の支払者からの給与収入が 2,000 万円を超える 人は年末調整の対象となりませんので、その人は確定申告で最終的な年間の所得税額と定額 減税額との精算を行うこととなります。
(注) 年末調整の際に年調減税の適用を受けない人は、主たる給与の支払者からの給与収入は 2,000 万円 を超えないが、その他の所得があるために合計所得金額が 1,805 万円を超える人になります。
(例:給与収入が 1,900 万円(給与所得 1,705 万円)で、不動産所得が 200 万円である人)

2-8 所得制限を超える人から定額減税不要の申出があった場合【令和6年4月追加】

問 給与収入以外の所得により、令和6年分の合計所得金額が 1,805 万円を超えることが明らかであり、年末調整時に定額減税の適用を受けることができないので、月々の給与等から月次減税額を控除しないでほしいという申出が従業員からありました。この場合、従業員からの申出に従い、月次減税額を控除しなくてもいいですか。

[A]
給与所得者については、主たる給与の支払者のもとで、令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等に係る源泉徴収において、月次減税額を順次控除することとされています。
そして、合計所得金額が 1,805 万円を超えると見込まれるかどうかにかかわらず、主たる給与の支払者のもとで、令和6年6月以後の給与等に係る源泉徴収において、控除対象者は一律に減税額の控除を受けることになりますので、控除対象者自身が定額減税の適用を受けるか受けないかを選択することはできません。

3-4 所得制限を超える人に対する月次減税

問 給与収入が 2,000 万円を超える人など、合計所得金額が 1,805 万円を超えることが確実な人についても、主たる給与の支払者のもとで、月次減税の対象とするのですか。

[A]
合計所得金額が 1,805 万円を超えることが見込まれる人であっても、基準日在職者に該当する場合には、月次減税の対象となります。

3. 副業している人は複数の会社で定額減税の対象になる?

定額減税の対象者は、会社に「令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)を提出している者になります。

扶養控除等申告書は、給与の支払いを受ける者(給与所得者)がその給与について扶養控除などの諸控除を受けるために会社に提出する書類ですが、2ヵ所以上の会社から給与の支払いを受けている場合でも、そのうちの1ヵ所の会社にしか提出することができません。

よって、定額減税の給与計算は、扶養控除等申告書を提出している会社のみで行う対応になりますので、基本的には複数の会社で定額減税の対象になることはありません。

なお、関連Q&Aの抜粋は以下のとおりです。

2-1 定額減税の適用対象者

問 給与の支払者のもとで、定額減税の適用を受けられるのはどのような人ですか。

[A]
給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けられる人の範囲等は、それぞれ次のようになっています。
⑴ 令和6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税)の適用が受けられる給与所得者(基準日在職者)

給与の支払者のもとで6月以後の控除(月次減税)を受けられる人 (参考)給与の支払者のもとで6月以後の控除(月次減税)を受けられない人
令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人(その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している居住者の人) ⑴ 令和6年6月1日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄又は丙欄が適用される居住者の人
(注) その給与の支払者に扶養控除等申告書を提出していない人がこれに該当します。
⑵ 令和6年6月1日より後に雇用された人
(注) この人がその後に扶養控除等申告書を提出した場合には、以下の⑵の年末調整の際に年調減税の適用を受けることになります。

⑵ 年末調整の際に年調所得税額から行う控除(年調減税)の適用が受けられる給与所得者
年末調整で控除を受けられる人 (参考)年末調整で控除を受けられない人
令和6年6月 1 日以後の令和6年分の年末調整時に給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している人(右の欄に掲 げる人を除きます。)
年の中途で年末調整の対象となる次のような人も、これに該当します。
① 令和6年6月 1 日以後、年の中途で退職した人のうち、次の人
イ 死亡により退職した人
ロ 著しい心身の障害のため退職した人で、その退職時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
ハ 12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
② 令和6年6月 1 日以後、年の中途で海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人
⑴ 年末調整の対象とならない人
令和6年分の年末調整時に給与の支払者のもとに勤務する人であっても、次に掲げる人については、この控除の適用を受け ることはできません。
① 令和6年中の主たる給与の収入金額が 2,000 万円を超える人
② 令和6年分の給与に係る源泉所得税について、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭 22 法律第 175 号)の規定による徴収猶予や還付を受けた人
③ 令和6年分の年末調整時にその給与の支払者に扶養控除等申告書を提出していない人
(注) 令和6年分の年末調整時に乙欄又は丙欄適用者である人がこれに該当します。
⑵ 令和6年5月 31 日以前において、年の中途で年末調整の対象となる人
⑶ 合計所得金額が 1,805 万円を超える人

2-5 従たる給与に係る定額減税

問 2か所から給与の支払を受けている人の従たる給与(乙欄適用給与)に係る源泉徴収税額について定額減税の適用を受けるには、どうしたらいいですか。

[A]
定額減税額は、主たる給与の支払者のもとでのみ控除されることになっていて、従たる給与の支払者のもとで控除されることはありません。
したがって、定額減税額のうち主たる給与の支払者のもとで控除しきれなかった金額がある場合には、確定申告の際に、主たる給与と従たる給与(給与所得以外の申告をする必要のある所得がある場合には、その所得を含みます。)を合わせたところで計算される年の所得 税額との間で、控除しきれなかった金額を精算することになります。
(注) 「従たる給与(乙欄適用給与)」とは、扶養控除等申告書を提出していない人に支払う給与等(次の問の「日雇賃金」を除きます。)をいいます。

4. 育児休業中の者の対応は?

定額減税の給与計算においては、毎月の給与計算で行う処理(以下、月次減税)と、年末調整で行う処理(以下、年調減税)の2種類がありますが、このうち月次減税は、令和6年6月1日に在籍している者のうち扶養控除等申告書を提出している居住者を対象に、令和6年6月1日以後最初に支払う給与又は賞与において源泉徴収される所得税から減税する計算を行います。

よって、育児休業中の者であっても、令和6年6月1日に在籍していて扶養控除等申告書を提出している居住者は月次減税の対象になりますが、育児休業中で給与の支払いがない場合は、復帰後に支払われる最初の給与又は賞与において源泉徴収される所得税から減税する計算を行います。

なお、関連Q&Aの抜粋は以下のとおりです。

3-5 休職者に対する定額減税【令和6年4月追加】

問 令和6年4月以前から引き続き勤務している従業員が、令和6年5月から3か月程度休職扱いとなったため、その間、給与を支払っていません。このような人は、基準日在職者に該当しますか。

[A]
休職扱いとされている従業員が、令和6年6月 1 日現在においてその給与の支払者から実際に給与の支払を受けていない状況にあるとしても、同日現在その支払者の従業員としての身分があり、かつ、その支払者に扶養控除等申告書を提出している限り基準日在職者に該当します。
なお、このような人については、主たる給与の支払者のもとで、その復職後実際に支払われる令和6年分の給与から月次減税額の控除を受けることになります。

5. 令和6年6月2日以降に入社した者の扱いは?

令和6年6月2日以降に入社した者で扶養控除等申告書を提出している居住者は、月次減税と年調減税のうち、月次減税については令和6年6月1日に在籍していないため対象になりませんが、年調減税については合計所得金額が1,805万円を超えない限り対象になります。

なお、関連Q&Aの抜粋は以下のとおりです。

3-3 基準日の後に就職した人に対する定額減税

問 令和6年6月2日以後に就職した人は、基準日在職者に該当しますか。

[A]
令和6年6月2日以後に就職した人については、基準日在職者に該当しません。
なお、このような人のうち扶養控除等申告書を提出した人は、月次減税額の控除を受けることはできませんので、通常は年末調整において定額減税額の控除(年調減税)を受けることになります。
(注) 合計所得金額が 1,805 万円を超える人については、年調減税は受けられません。また、年末調整の対象とならない人は確定申告で精算します。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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