<厚労省公表>派遣労働者の均等・均衡待遇への対応
令和5年度も労使協定方式が約9割
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【5分で納得コラム】今回は、「派遣労働者の均等・均衡待遇への対応」について解説します。
派遣労働者の均等・均衡待遇への対応 令和5年度も労使協定方式が約9割
1. 派遣労働者の均等・均衡待遇
働き方改革関連法により、通常の労働者(いわゆる正社員)と短時間労働者・有期雇用労働者(パート社員、契約社員など)との間の差別的な取扱いや不合理な待遇差を禁止する均等・均衡待遇が求められていますが、派遣労働者についてもその対応が必要です。
派遣労働者については、派遣元と雇用契約を結んだ上で、派遣元ではなく派遣先の指揮命令下で勤務するという特殊性から、均等・均衡待遇においても、雇用関係にある派遣元ではなく、実際に勤務する派遣先における均等・均衡待遇を図る「派遣先均等・均衡方式」か、労使協定おいて派遣労働者の賃金が同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金水準以上となること等を定める「労使協定方式」のいずれかを選択して対応することが、令和2年4月から派遣元事業主に義務付けられています。
2. 労使協定方式が約9割
厚生労働省から公表された「労使協定書の賃金等の記載状況(一部事業所の集計結果(令和5年度))」によれば、派遣先均等・均衡方式を選択した割合は7.9%、労使協定方式を選択した割合は88.8%、併用している割合は3.3%となっており、派遣元の約9割で労使協定方式が採用されています。なお、下表のとおり、労使協定方式の選択割合は例年同程度となっています。
■労使協定書の賃金等の記載状況(一部事業所の集計結果)
選択している待遇決定方式 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度 派遣先均等・均衡方式 8.2% 7.8% 5.2% 7.9% 労使協定方式 87.8% 88.2% 88.6% 88.8% 併用 4.0% 4.0% 6.2% 3.3% 3. 地域指数・通勤手当・退職金などの状況
労使協定方式においては、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行うことができるよう、労使協定において一定の事項を定めることが義務付けられています。
「労使協定書の賃金等の記載状況(一部事業所の集計結果(令和5年度))」では、労使協定で定める必要がある事項についてもその内容について集計されており、その中から一部を抜粋すると以下のとおりです。
■地域指数の選択状況
地域指数とは、派遣就業場所の地域の物価等を反映するため、職業安定業務統計の求人平均賃金をもとに、都道府県及び公共職業安定所の管轄地域別に全国計を100として職業大分類の構成比の違いを除去して算出した指数をいいますが、都道府県別又は公共職業安定別のどちらを選択するかについて労使協定で定める必要があり、下表はそれを集計したものになります。
都道府県 公共職業安定所 併用 その他 85.2% 11.5% 1.6% 1.6% なお、「都道府県」は、都道府県別地域指数のみを選択している事業所、「公共職業安定所」は、公共職業安定所別地域指数のみを選択している事業所、「併用」は、都道府県別と公共職業安定所別地域指数を職種や地域に応じて選択している事業所、「その他」は、「地域指数は別表のとおりとする」等の記載があるが、別表の提出がなかったなどの事業所の割合となっています。
■通勤手当の支給状況
通勤手当については、実費支給をする又は一般の労働者の通勤手当に相当する額と同等以上を支給する(令和5年度であれば1時間あたり71円(以上)を加算支給。なお、単価は年度毎に見直されます。)のどちらを選択するかについて労使協定で定める必要があり、下表はそれを集計したものになります。
通勤手当(実費) 通勤手当(定額支給) 合算により支給 不明 92.3% 6.7% 0.3% 0.7% なお、「合算により支給」は、通勤手当相当分を時給額等に含めて支払っている事業所の割合となります。
■退職金の支給状況
退職金については、退職金制度に基づいて退職金を支給する、退職金の費用を毎月の賃金等で前払いする、又は中小企業退職金共済制度や確定拠出年金等に加入する、のどれを選択するかについて労使協定で定める必要があり、下表はそれを集計したものになります。
退職金制度の方法 退職金前払いの方法/合算 中退共等への加入方法 その他 30.2% 56.0% 8.4% 3.4%
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。