<令和6年4月1日から>障碍者の雇用について

2024年1月31日
<令和6年4月1日から>障碍者の雇用について

【5分で納得コラム】今回は、「令和6年4月1日からの障碍者の雇用」について解説します。

障碍者の雇用状況 令和6年4月1日から変わること

1. 令和5年の雇用状況

障害者雇用促進法では、企業等に、毎年6月1日現在の身体障碍者、知的障碍者、精神障碍者の雇用状況の報告を求めていますが、その結果によると、令和5年の障碍者の雇用数及び実雇用率は以下のとおりになっています。

■令和5年の障碍者の雇用状況

雇用数 実雇用率
民間企業 642,178.0人 2.33%
公的機関
都道府県
市町村
教育委員会
9,940.0人
10,627.5人
35,611.5人
16,999.0人
2.92%
2.96%
2.63%
2.34%
独立行政法人など 12,879.5人 2.76%

※参考:厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」より

民間企業においては、雇用数は20年連続で過去最高を更新し、また、実雇用率は12年連続で過去最高を更新しています。実雇用率の2.33%は、法定雇用率(雇用を義務付けている常時雇用する労働者に占める障碍者の割合)の2.3%を上回っており、半数の企業が法定雇用率を達成している状況になっています。

ただし、雇用率の達成に向け障碍者雇用数の確保を優先するような動きもみられるとして、障碍者雇用ビジネスに係る実態把握や、雇用の質の向上に向けた望ましい取り組みのポイントを紹介したリーフレットを公開する等の対応も行われています。

2. 法定雇用率の引き上げ

令和4年の改正により法定雇用率の段階的な引き上げが決定しており、民間企業の場合は、令和6年4月1日からは2.5%へ、また、令和8年7月からは2.7%へ変更になります。

適用時期 民間企業の法定雇用率
現在 2.3%
令和6年(2024年)4月~ 2.5%
令和8年(2026年)7月~ 2.7%

これにより、本年4月からは、常時雇用する労働者数40人につき1人以上の割合で障碍者を雇用する対応が求められますので、自社の雇用状況について改めて確認が必要です。

3. 令和6年4月1日から変わること

法定雇用率の引き上げの他に、令和6年4月1日から以下の点も変わりますので確認しておきましょう。

週所定労働時間20時間未満の障碍者の取扱い

通常の労働者の週の半分に満たない時間での労働は、それにより職業生活において自立しているとは言えないという考え方に基づき、週所定労働時間が20時間未満で働く障碍者は雇用率算定の対象とされてきませんでしたが、障碍特性により長時間の勤務が困難な障碍者の雇用機会の拡大を図る観点から、週所定労働時間が20時間未満で働く重度身体障碍者又は重度知的障碍者、及び精神障碍者についても、下表の赤枠のように、特例的な取扱いとして実雇用率上1人をもって0.5人として算定できるようになります。ただし、就労継続支援A型の利用者は除かれます。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 10時間以上20時間未満
身体障碍者 1人 0.5人
重度 2人 1人 0.5人
知的障碍者 1人 0.5人
重度 2人 0.5人 0.5人
精神障碍者 1人 0.5人(当分の間1人) 0.5人

また、これに伴い、週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く障碍者を雇用する事業主に対して支給されていた特例給付金は廃止されます。

障害者雇用調整金の見直し

常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を超えて障碍者を雇用している場合は、その超えて雇用している障碍者数に応じて1人につき月額29,000円(令和5年3月31日までの期間については27,000円)の障害者雇用調整金が支給されてきましたが、令和6年4月1日からは、その支給対象人数が10人を超える場合は、当該超過人数分に対してはその金額が月額23,000円に変更されます。

報奨金の見直し

常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障碍者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障碍者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障碍者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されてきましたが、令和6年4月1日からは、その支給対象人数が35人を超える場合は、当該超過人数分に対してはその金額が1人につき16,000円に変更されます。


上記の他、障碍者の雇入れ及び雇用継続に対する相談支援等に対応するための助成措置の新設や既存の助成金(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金等)の拡充等が行われます。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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