【就業規則の周知】
労働条件通知書に確認方法を明記しましょう
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【5分で納得コラム】今回は、「就業規則の周知」について解説します。
就業規則の周知 労働条件通知書に確認方法を明記
1. 労働条件通知書における明記
令和6年4月1日から労働基準法等が改正され、労働契約締結時に明示すべき労働条件が追加されますが、それに伴って厚生労働省からモデル労働条件通知書が公開されています。
その通知書をみると、就業場所・業務の変更の範囲や有期労働契約に関する更新上限の内容等の今回の改正内容に関するもの以外に、「就業規則を確認できる場所や方法」という項目が追加されています。
この追加された項目は、厚生労働省のQ&Aにおいても「労基則の改正に基づくものではない。」とされており、改正事項とは直接的には関係ありません。では、なぜ、今回のモデル労働条件通知書に追加されているのでしょうか。
2. 就業規則の周知義務
就業規則については、従来から、労働基準法106条1項に基づき、使用者に、法定の方法により労働者に周知させることが義務付けられています。なお、法定の方法とは、労働基準法施行規則52条の2に基づく次のいずれかの方法をさします。
- ① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- ② 書面を労働者に交付すること。
- ③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
今回、モデル労働条件通知書に「就業規則を確認できる場所や方法」が追加されたのは、平成11年に通達で示された「就業規則等を労働者が必要なときに容易に確認できる状態にあることが「周知させる」ための要件である。」という考え方について、労働契約関係の明確化の観点から、より具体的に例示したものといえます。
よって、他の方法により、就業規則を労働者が必要なときに容易に確認できる状態になっていれば、必ずしも、労働条件通知書等に「就業規則を確認できる場所や方法」を追加する必要はありません。ただし、就業規則の保管場所を漏れなく通知するためには、労働条件の明示事項として労働条件通知書等に盛り込む対応が確実といえるでしょう。
3. 就業規則の効力
就業規則の周知は、労働基準法106条1項に基づき必要ですが、それとは別に、「就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」(フジ興産事件・最高裁・平成15年10月10日)とされています。この場合の周知方法は、前述の労働基準法施行規則52条の2に基づく①~③の方法に限らず、「知ろうと思えば知り得る状態にしておくこと」であると解されています。
仮に、労働基準法に基づき労働基準監督署に就業規則を届け出ていたとしても、労働者への周知が適切に行われていなければ、就業規則に記載の労働条件を労働者に適用することはできませんので、改めて、自社の就業規則の周知状況を確認してみましょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。