【2024年4月実施】労働条件の明示・追加項目「変更の範囲」の記載方法について解説します
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【5分で納得コラム】今回は、2024年4月からの労働条件の明示・追加項目「変更の範囲」の記載方法について解説します。
内容
2024年4月からの労働条件の明示・追加項目「変更の範囲」の記載方法は?
1. 明示すべき追加項目
使用者には、労働契約締結時に労働者に労働条件を明示することが義務付けられていますが、改正法が施行される2024年4月1日からは、明示すべき項目として下表の項目が追加されます。
◆2024年4月から明示すべき追加項目
(労働基準法施行規則5条1項1号の2・1号の3、5条5項、5条6項)明示すべき追加項目 対象者 無期労働契約 有期労働契約 ①就業の場所の変更の範囲 対象 対象 ②従事すべき業務の変更の範囲 対象 対象 ③有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限
(上限の定めがある場合)- 対象 ④無期転換申込みに関する事項
(通算契約期間が5年を超える契約を締結する場合(例外あり))- 対象 ⑤無期転換後の労働条件
(通算契約期間が5年を超える契約を締結する場合(例外あり))- 対象 また、法令上の義務ではありませんが、告示に基づき下表の項目を説明することが求められています。
◆2024年4月から説明すべき追加項目
(有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準1条、5条)説明すべき追加項目 対象者 無期労働契約 有期労働契約 有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限を定め又は引き下げる理由
(新たに上限を定め又は引き下げる場合)- 対象 無期転換後の労働条件を決定するに当たり、正社員等とのバランスを考慮した事項
(通算契約期間が5年を超える契約を締結する場合(例外あり))- 対象 2. 「変更の範囲」の記載方法は?
明示すべき追加項目①②では、入社してから退職するまでの労働契約期間中に通常就業することが想定されている就業の場所・従事する業務を明示する必要があります。例えば、労働契約期間中にテレワークで勤務することが通常想定されている場合にはそれも含めて明示します。ただし、臨時的な応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の当該場所・業務は、明示すべき範囲には含まれないと解されています。
厚生労働省作成のパンフレットに以下の記載例が示されていますので、それらも参考にしつつ、各社の状況を踏まえて、「こんな場所で勤務するなんて入社時に聞いていない!」などと思われることがないよう、トラブル防止の観点から記載内容を検討する必要があります。
【就業場所・従事すべき業務に限定がない場合】
【就業場所・従事すべき業務に一部限定がある場合】
【就業場所・従事すべき業務に変更がない場合】
※「2024年4月からの労働条件明示のルール変更備えは大丈夫ですか?」(厚生労働省)より
3. すでに入社している社員にも追加項目の明示が必要?
労働条件の明示は、予期せぬ低条件で働かされることがないよう、労働条件を明確にするために「労働契約の締結時」に実施するものになります。よって、すでに雇用され働いている者に対して実施することを求めているものではないため、既存社員に項目を追加して改めて労働条件の明示を行う必要はありません。
ただし、すでに雇用されている者のうち有期労働契約者について、更新により2024年4月1日以降に労働契約を締結することになる場合は、その際に追加項目を含めて労働条件の明示が必要になります。
4. 来春の新卒社員への対応は?
今回の追加項目を含めた労働条件の明示が必要となるのは、2024年4月1日以降に労働契約を締結する場合になります。よって、たとえ労働契約期間が2024年4月1日以降であったとしても、労働契約の締結が2024年3月31日以前に行われる場合は、今回の追加項目の明示は必要ありません。
来年4月1日入社の新卒社員との労働契約の締結は、通常2024年3月31日以前に行われると思いますので、当該社員にはこれまでの項目を明示すればよく、追加項目の明示は不要ということになります。もちろん、改正法施行前であっても追加項目を明示していただいても問題ありませんし、トラブル防止の観点からは追加項目を明示した方がよいといえるでしょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。