1年単位の変形労働時間制の本社一括届が可能に
届出事務を効率よく

2023年3月8日
1年単位の変形労働時間制の本社一括届が可能に。届出事務を効率よく

【5分で納得コラム】今回のテーマは「1年単位の変形労働時間制」です。

1年単位変形の本社一括届が可能に届出事務を効率よく

1. 変形労働時間制とは

労働基準法には1日及び1週間において労働させることができる時間が定められており、これを法定労働時間といいます。会社は、就業規則等に定めることにより、始業時刻と終業時刻を決めることができますが、休憩時間を除いた始業時刻から終業時刻までの時間(これを所定労働時間といいます。)は、法定労働時間を超えることはできません。

しかし、業務によっては、週や季節等により労働時間にバラツキがあり、繁忙期には法定労働時間を超過して労働させる必要があるものの、閑散期には法定労働時間に満たない時間しか労働させる必要がない場合もあります。

このような季節等によって繁閑がある業務に対し、所定労働時間を弾力的に定めることを認めたのが変形労働時間制です。変形労働時間制では、対象期間(変形期間)を平均して1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えなければ、特定の日又は週に法定労働時間を超える所定労働時間を定めることができます。

2. 1年単位の変形労働時間制導入の手続き

変形労働時間制のうち、変形期間を1ヵ月を超え1年以内に定めたものが「1年単位の変形労働時間制」です。この制度を導入するには、次の事項について労使で協定し、これを所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。

  • ① 対象労働者の範囲
  • ② 対象期間(1ヵ月を超え1年以内の期間)及び起算日
  • ③ 特定期間(繁忙期間)
  • ④ 労働日及び労働日ごとの労働時間
  • ⑤ 労使協定の有効期間

3. 1年単位変形の本社一括届が可能に

1年単位の変形労働時間制に関する届出は、これまではそれぞれの事業場において対応が必要でしたが、利便性を高めるため、2023年2月27日からは、電子申請の場合に限り、本社で一括して対応することが可能になりました。
ただし、届出事項のうち次の事項に関する内容がすべて本社と同一の事業場に限ります。

  • ✓ 対象期間及び特定期間(起算日)
  • ✓ 対象期間中の1週間の平均労働時間数
  • ✓ 協定の有効期間
  • ✓ 労働時間が最も長い日の労働時間数(満18歳未満の者)
  • ✓ 労働時間が最も長い週の労働時間数(満18歳未満の者)
  • ✓ 対象期間中の総労働日数
  • ✓ 労働時間が48時間を超える週の最長連続週数
  • ✓ 対象期間中の最も長い連続労働日数
  • ✓ 対象期間中の労働時間が48時間を超える週数
  • ✓ 特定期間中の最も長い連続労働日数
  • ✓ 対象期間中の各日及び各週の労働時間並びに所定休日
  • ✓ 旧協定の対象期間
  • ✓ 旧協定の労働時間が最も長い日の労働時間数
  • ✓ 旧協定の労働時間が最も長い週の労働時間数
  • ✓ 旧協定の対象期間中の総労働日数

本社一括届は、今回新たに可能になった「1年単位の変形労働時間制の届出」の他に、「就業規則の届出」及び「36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)の届出」も認められていますので、届出事務効率の観点から活用を検討されるとよいでしょう。なお、「就業規則の届出」及び「36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)の届出」の本社一括届については、電子申請ではなく書面等による届出の場合も可能です。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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