障がい者の法定雇用率の引き上げ
2.3%から段階的に2.7%へ
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【5分で納得コラム】今回のテーマは「障がい者の法定雇用率の引き上げ」についてです。
1. 障がい者の法定雇用率
障がい者が希望や能力、適性を活かして活躍することができる社会を目指し、障害者雇用促進法では、事業主に対して、従業員(常時雇用する労働者※)の一定割合の障がい者を雇用することを義務づけています。この一定割合のことを法定雇用率といい、現在の法定雇用率は民間企業の場合は2.3%になっています。
※障がい者雇用における「常時雇用する労働者」とは、1年以上継続して雇用される者又は1年以上継続して雇用される見込みがある者をいいます。ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満の者は含まれません。法定雇用率は政令で定められていますが、労働者の総数に占める身体障がい者、知的障がい者及び精神障がい者の労働者の割合を基準に、少なくとも5年ごとに見直されています。
2. 法定雇用率の引き上げ
民間企業の法定雇用率のこれまでの推移は以下のとおりです。
施行時期 民間企業の法定雇用率 1960年(昭和35年)7月~ 現業的事業所1.1%
非現業的事業所1.3%1968年(昭和43年)10月~ 1.3% 1976年(昭和51年)10月~ 1.5% 1988年(昭和63年)4月~ 1.6% 1998年(平成10年)7月~ 1.8% 2013年(平成25年)4月~ 2.0% 2018年(平成30年)4月~ 2.2% 2021年(令和3年) 4月~ 2.3% 前回の見直しから5年が経過することから、昨年より検討がなされ、2023年1月に労働政策審議会で提示された法定雇用率案を踏まえて、2024年(令和6年)4月から法定雇用率を2.7%に引き上げつつ、計画的な対応が可能になるよう2026年(令和8年)6月末日までは2.5%とする予定で改正準備が進められています。
適用時期(予定) 民間企業の法定雇用率 現在 2.3% 2024年(令和6年)4月~ 2.5% 2026年(令和8年)7月~ 2.7% これにより、2024年(令和6年)4月からは常時雇用する労働者数40人につき1人以上の割合で、2026年(令和8年)7月からは37.5人につき1人以上の割合で障がい者を雇用する対応が求められます。
3. 法定雇用数の確認
法定雇用率の引き上げに伴い、まずは、改正後の自社の障がい者の法定雇用数を確認しましょう。
法定雇用数は、先の例にあるように、常時雇用する労働者数に法定雇用率を乗じて算出されますが、1人未満の端数があるときは端数は切り捨てます。また、短時間労働者(1年雇用見込みがある週所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)については0.5人とみなして常時雇用する労働者に含めます。
そして、実雇用数が法定雇用数に満たない場合は、1年後の法定雇用率引き上げに向けて、ハローワークや障がい者の雇用促進支援を行っている専門会社等に相談の上、法定雇用率の達成に向けた取り組みを行いましょう。
なお、障がい者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障がい者の雇用水準を引き上げることを目的に、法定雇用率を満たしていない事業主からは納付金を徴収する一方で、障がい者を多く雇用している事業主に対しては調整金を支給する仕組み等がありますので、障がい者の雇用促進に向けた支援策の活用も検討されるとよいでしょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。