短時間労働者に対する社会保険の適用拡大①
週の所定労働時間が20時間以上であること
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2016年10月からスタートした短時間労働者に対する社会保険の適用拡大について、2022年10月からその対象となる適用事業所の規模要件が変更され、「厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く。)の総数」が「常時500人を超える事業所」から「常時100人を超える事業所」まで対象になります。
そこで、数回にわたって社会保険の適用拡大の対象となる短時間労働者の要件をご紹介します。
なお、当該対象となる短時間労働者は、適用除外者も踏まえると以下の4つをすべて満たす者になります。
- ① 週の所定労働時間が20時間以上であること
- ② 月額賃金が8.8万円以上であること
- ③ 学生でないこと
- ④ 2ヵ月を超える雇用の見込みがあること
今回は「① 週の所定労働時間が20時間以上であること」についてその内容を確認します。
所定労働時間
所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などで定められた始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間のことをいいます。
例えば、雇用契約書で「始業13:00~終業18:00(休憩なし)」と定めていた場合は、1日の所定労働時間は「5時間」になります。なお、雇用契約を締結する際に、「忙しい日は残業をお願いすることがあるかもしれない」と伝えられ、当初の予定を延長して18:00以降も勤務(いわゆる法内残業)する日があることも想定されますが、所定労働時間という場合は当初の雇用契約上の労働時間をさし、いわゆる残業時間は含みません。
週の所定労働時間は、例えば、先の例で雇用契約書において「勤務日を週4日」とする内容を定めていた場合は、週の所定労働時間は「5時間×4日=20時間」になります。
[例①]
- 1日の所定労働時間:5時間(始業13:00~終業18:00・休憩なし)
- 勤務日:週4日
- 週の所定労働時間:5時間×4日=20時間 ≧ 20時間
週の勤務日数が決まっていない場合
勤務シフトにより変動するなど週の勤務日数が決まっていない場合には、週の平均所定労働時間で要件を満たすか否かを判断します。
例えば、1日の所定労働時間が「8時間」で「月12日」勤務する契約にしていた場合は、月の労働時間数である96時間(=8時間×12日)を、1ヵ月あたり平均週数約4.33※(=52÷12)で除して週の所定労働時間を算出します。
※約4.33は、1年を52週として計算された年における月平均週数になります。
[例②]
- 1日の所定労働時間:8時間(始業9:00~終業18:00・休憩1時間)
- 勤務日:月12日
- 週の所定労働時間:(8時間×12日)÷(52週÷12月)≒22時間 ≧ 20時間
月により所定労働時間に長短がある場合
お子さんが学校の関係で長期休みとなる月は勤務日を少なくするなど、月により所定労働時間に長短がある場合も想定されますが、その場合は、長短がある例外的な月は除いて、通常月で週の所定労働時間を算出します。
例えば、7~8月のお子さんが夏休みの間は月4日しか勤務せず、それ以外の通常月は月12日勤務する場合は、7~8月を除いた通常月の12日勤務を前提に週の所定労働時間を算出します。
[例③]
- 1日の所定労働時間:8時間(始業9:00~終業18:00(休憩1時間))
- 勤務日:7~8月は月4日、それ以外は月12日
- 週の所定労働時間:(8時間×12日)÷(52週÷12月)≒22時間 ≧ 20時間
※7~8月は、(8時間×4日)÷(52週÷12月)=7時間 で20時間を下回りますが、例外となる当該月は除いて考えます。
恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合
雇用契約書では週の所定労働時間20時間未満となる旨を定めていた場合でも、実際勤務した結果、週20時間以上となることもあり得ます。その場合は、次の(1)(2)のいずれも満たすときに、実際に週20時間以上となった月の3ヵ月目の初日から「① 週の所定労働時間が20時間以上であること」を満たすものとして扱います。
(1) 実際の労働時間が連続する2ヵ月において週20時間以上となった場合
(2) 引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合
[例④]
- 4月からの雇用契約に基づく週の所定労働時間:2日×8時間=16時間
- 4~5月の実際の勤務実績:3日×8時間=週24時間、6月以降もこの勤務状況が見込まれる
➡ 6月1日から「①週の所定労働時間が20時間以上であること」の要件を満たす
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。