収益認識会計基準等に係る注記事項の概要

2022年4月7日
令和3年 就労条件総合調査

1. はじめに

収益認識会計基準等が、2021年4月1日以後開始する事業年度から原則適用となり、初めての年度決算を迎えます。今回は、開示が必要となる収益認識会計基準等に係る注記事項の概要をご紹介いたします。

2. 収益認識に関する注記開示の要否

(1)有価証券報告書の提出義務のある大会社

重要な会計方針の注記 年度 四半期
計算書類 有価証券報告書
   連結財務諸表作成会社の単体
企業の主要な事業における主な履行義務の内容
企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
①、②以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容
収益認識に関する注記
収益の分解情報 省略可
収益を理解するための基礎となる情報(重要な会計方針にすべて記載している場合は、収益認識に関する注記として記載しないことができるとされています。(収益認識会計基準80-8項))
(重要な会計方針にすべて記載している場合は、記載不要)
当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報 省略可

〇:記載が必要、△:該当事項があれば記載

(2)有価証券報告書の提出義務のある大会社以外

重要な会計方針の注記 年度
計算書類
企業の主要な事業における主な履行義務の内容
企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
①、②以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容
収益認識に関する注記
収益の分解情報 省略可
収益を理解するための基礎となる情報(重要な会計方針にすべて記載している場合は、収益認識に関する注記として記載しないことができるとされています。(収益認識会計基準80-8項))
(重要な会計方針にすべて記載している場合は、記載不要)
当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報 省略可

〇:記載が必要、△:該当事項があれば記載

3. 収益認識に関する注記の各項目の記載内容等

重要な会計方針の注記 記載内容
(1) 企業の主要な事業における主な履行義務の内容 収益認識に関する注記の「収益を理解するための基礎となる情報」に含まれている。
(2) 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
(3) (1)、(2)以外に重要な会計方針に含まれると判断した内容
収益認識に関する注記 開示内容
(1) 収益の分解情報 四半期と同様の開示内容
(2) 収益を理解するための基礎となる情報(重要な会計方針にすべて記載している場合は、収益認識に関する注記として記載しないことができるとされています。(収益認識会計基準80-8項)) 例示内容
①契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2) ア 履行義務に関する情報 (ア) 財又はサービスが他の当事者により顧客に提供されるように手配する履行義務(すなわち、企業が他の当事者の代理人として行動する場合)
(イ) 返品、返金及びその他の類似の義務
(ウ) 財又はサービスに対する保証及び関連する義務
イ 重要な支払条件に関する情報 (ア) 通常の支払期限
(イ) 対価に変動対価が含まれる場合のその内容
(ウ) 変動対価の見積りが収益認識会計基準 54項(※1)に従って通常制限される場合のその内容
(エ) 契約に重要な金融要素が含まれる場合のその内容
②取引価格の算定に関する情報(ステップ3) ア 取引価格を算定する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報 (ア) 変動対価の算定
(イ) 変動対価の見積りが 収益認識会計基準54項(※1)に従って制限される場合のその評価
(ウ) 契約に重要な金融要素が含まれる場合の対価の額に含まれる金利相当分の調整
(エ) 現金以外の対価の算定
(オ) 返品、返金及びその他の類似の義務の算定
③履行義務への配分額の算定に関する情報(ステップ4) ア 取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報 (ア) 約束した財又はサービスの独立販売価格の見積り
(イ) 契約の特定の部分に値引きや変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分
④履行義務の充足時点に関する情報(ステップ5) ア 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
イ 一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠
ウ 一時点で充足される履行義務について、約束した財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断
⑤本会計基準の適用における重要な判断 ア 収益認識会計基準を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるもの
(3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報 記載内容
①契約資産及び契約負債の残高等 ア 顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首及び期末残高(BSに区分して表示していない場合)
イ 当期に認識した収益の額うち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
ウ 当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合その内容
エ 履行義務の充足時期が通常の支払時期にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明
オ 過去の期間に充足した履行義務から、当期に認識した収益がある場合には、当該金額
②残存履行義務に配分した取引価格(※2) ア 当期末時点で未充足(又は部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額
イ 上記に従って注記した金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのか、次のいずれかの方法により注記
(ア) 残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法
(イ) 定性的情報を使用した方法

(※1)
変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めるとされています。

(※2)
次のいずれかの条件に該当する場合には、注記に含めないことができるとされています(収益認識会計基準80-22項)。
(1) 履行義務が、当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である。
(2) 提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、請求する権利を有している金額で収益を認識している場合(収益認識適用指針19項)。
(3) 次のいずれかの条件を満たす変動対価である。
① 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ(収益認識適用指針第67項)
② 変動対価及びその事後的な変動のすべてを、1つの履行義務あるいは単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービスに配分している場合、完全に未充足の履行義務に配分される変動対価 (収益認識会計基準32項(2)、72項)


上記の表における「収益認識に関する注記」の各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができるとされています(収益認識会計基準80-5項)。

また、収益認識に関する注記を記載するにあたり、どの注記事項にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかを開示目的に照らして判断し、重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載したり、特徴が大きく異なる項目を合算したりすることにより有用な情報が不明瞭とならないように、注記は集約又は分解するとされています。さらに、上記の表の注記事項の区分(収益認識に関する注記(1)〜(3))に従って注記事項を記載する必要はないとされています(収益認識会計基準80-6、80-7項)。

なお、収益認識に関する注記として記載する内容について、財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができるとされています(収益認識会計基準80-9項)。

(凡例)
・収益認識会計基準等:収益認識に関する会計基準、収益認識に関する会計基準の適用指針
・収益認識会計基準:収益認識に関する会計基準
・収益認識適用指針:収益認識に関する会計基準の適用指針

執筆陣紹介

仰星監査法人

仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。

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