雇用保険の「マルチジョブホルダー制度」

2021年10月27日
雇用保険の「マルチジョブホルダー制度」

2022年1月1日から雇用保険の「マルチジョブホルダー制度」が始まります。

マルチジョブホルダー制度とは

雇用保険については、昼間学生などの一部の例外を除き、①週の所定労働時間が20時間以上であること、②31日以上の雇用見込みがあることの2つの要件を満たす場合に強制的に適用されます。

上記は「主たる事業所」の所定労働時間等で判断しますので、これまでは、「複数の事業所」に勤務し合算して所定労働時間の要件を満たす場合であっても雇用保険へ加入することはできませんでしたが、2022年1月1日からは、一部の者について、「複数の事業所」に勤務し合算して週の所定労働時間が20時間以上であるなどの一定の要件を満たした場合は、雇用保険へ加入することができるようになります。これを「マルチジョブホルダー制度」といいます。

マルチジョブホルダー制度の適用対象者

マルチジョブホルダー制度の適用対象となる者は、以下の3つのすべてを満たす者になります。

複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。

なお、通常の雇用保険への加入とは異なり、上記の要件を満たす場合は必ず雇用保険に加入しなければならないわけではなく、あくまで本人が希望した場合にのみ加入することができるものになります。

上記により加入した場合は、雇用保険上は「マルチ高年齢被保険者」として区分されます。

マルチジョブホルダー制度の加入手続き

通常の雇用保険の加入手続は事業主が行いますが、「マルチ高年齢被保険者」の加入手続きは、加入を希望する「本人」が本人の住所又は居所を管轄するハローワークで行います。

なお、手続き書類には事業主が記載すべき事項がありますので、本人から申し出があった場合は事業主は速やかに必要事項を記載するなどの協力をしなければなりません。

また、事業主は、通常の雇用保険の加入者と同様に、本人から雇用保険料を徴収して労働保険料として納付しなければなりません。

マルチジョブホルダー制度の加入者が失業した場合

「マルチ高年齢被保険者」が失業した場合には、一定の要件を満たせば、高年齢求職者給付金(被保険者であった期間に応じて基本手当日額の30日分又は50日分の一時金)を受給することがでます。

なお、2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合でも受給することができますが、2つの事業所以外の事業所で就労しており、離職していないもう1つの事業所と当該3つ目の事業所を併せて、「マルチ高年齢被保険者」の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるため、受給することはできません。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。

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