「過重労働解消キャンペーン」による重点監督 違反事業場は7割超

2021年5月26日

厚生労働省では毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためのキャンペーンなどを行っていますが、今月7日に、昨年11月に実際した『「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果』が公表されましたので、その内容を抜粋してご紹介します。

今回のキャンペーンでは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる9,120事業場に対して集中的に調査が行われました。

過重労働をしてるビジネスマン

違反事業場は7割超

今回の調査において労働基準関係法令違反が認められたのは6,553事業場(調査対象事業場の71.9%)で、7割を超える事業場で法違反が確認されました。主な法違反の内容などは以下のとおりですが、月200時間を超える時間外労働・休日労働をさせていた事業場も確認されたようです。

違法な時間外労働がある(2,807事業場、調査対象事業場の30.8%)

…36協定なく時間外労働を行わせている、36協定が無効又は36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせている、時間外労働・休日労働が月100時間を超えているなどの事業場の集計

…時間外労働・休日労働が月80時間を超えていたのは640事業場で、そのうち月100時間を超えていたのは341事業場(月100時間超150時間以下が282事業場、月150時間超200時間以下が49事業場、月200時間超が10事業場)

過重労働による健康障害防止措置が未実施(1,829事業場、調査対象事業場の20.1%)

…衛生委員会を設置していない、健康診断を行っていない、月80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していない、客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないなどの事業場の集計

賃金不払残業がある(478事業場、調査対象事業場の5.2%)

…法令に基づく割増賃金の支払いが行われていない事業場の集計※計算誤りなどは含まず

健康障害防止のための指導を受けたのは3,046事業場

今回の調査において過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導がなされたのは3,046事業場(調査対象事業場の33.4%)です。指導内容と指導事業場数は以下のとおりです。

◇月80時間を超える時間外労働・休日労働を行っている者への面接指導等の実施(275事業場)

◇長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議の実施(390事業場)

◇時間外労働・休日労働の月45時間以内への削減(1,996事業場)

◇時間外労働・休日労働の月80時間以内への削減(1,024事業場)

◇面接指導等が実施できる仕組みの整備等(103事業場)

◇ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策に関する調査審議の実施(94事業場)

労働時間の適正把握について指導を受けたのは1,528事業場

今回の調査において「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき指導がなされたのは1,528事業場(調査対象事業場の16.8%)です。
指導内容と指導事業場数は以下のとおりです。

◇始業・終業時刻の確認・記録(958事業場)※ガイドライン4(1)

◇自己申告制の説明(73事業場)※ガイドライン4(3)ア・イ

◇実態調査の実施(615事業場)※ガイドライン4(3)ウ・エ

◇適正な申告の阻害要因の排除(62事業場)※ガイドライン4(3)オ

◇管理者の職務(27事業場)※ガイドライン4(6)

◇労使協議組織の活用(7事業場)※ガイドライン4(7)

※労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらし、時間外労働・休日労働が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるとされています。自社の過重労働による健康障害を防止するための対策は十分であるか、改めて確認してみましょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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