女性活躍推進法の改正

2020年2月26日

「日本再興戦略」において2014年に“社会のあらゆる分野において2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする”とする目標が閣議決定されましたが、当該目標の達成は相当ハードルが高い状況にあり、世界経済フォーラムが発表する男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、日本の2019年のランキングは調査対象153ヵ国中121位と低く、前年(110位)よりも順位を落とす結果となっています。

女性活躍推進法の改正

上記の目標達成に向けて、女性が職業生活で活躍できる環境を整備するため2015年に制定された「女性活躍推進法」ですが、改正法が2020年4月1日から施行されることとなりましたので、今回はその概要を確認します。

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法は、固定的性別役割分担意識や偏見、過去の差別や経緯に起因して生じた男女の置かれた社会的状況の格差を解消し、実質的な機会の平等を担保するためにはポジティブ・アクション(男女のいずれか一方に対し、機会を積極的に提供すること)による必要があるとして2015年に制定された法律で、国、地方公共団体、一般事業主のそれぞれにおける女性の活躍推進に関する責務等が定められています。
当該法律において一般事業主に義務付けている事項は次の通りです。なお、常時雇用する労働者数が300人以下の事業主については努力義務となっています。

  • ✔  自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  • ✔  状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
  • ✔  行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
  • ✔  女性の活躍に関する情報の公表

改正ポイント

今回の改正内容のポイントは次の4点となります。

  1. 行動計画で定める数値目標に関する変更

    *2020年4月1日施行
    *常時雇用する労働者数が301人以上の事業主

  2. 情報公表に関する変更

    *2020年6月1日施行
    *常時雇用する労働者数が301人以上の事業主

  3. プラチナえるぼしの創設

    *2020年6月1日施行
    *すべての事業主

  4. 行動計画の策定等の義務化対象事業主の拡大

    *2022年4月1日施行
    *常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主

1.行動計画で定める数値目標に関する変更改正ポイント

常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、行動計画の策定にあたり、これまでは数値目標を1つ以上盛り込むことが求められていましたが、2020年4月1日以降が始期となる行動計画においては、原則として次の各グループからそれぞれ1項目以上を選択して関連する数値目標を設定しなければなりません。

■グループ1:女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の配置の状況
  • 男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況
  • 管理職及び男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合
  • 男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合
  • 男女の人事評価の結果における差異
  • セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況
  • 男女別の職種又は雇用形態の転換の実績(派遣労働者の場合は雇入れの実績)
  • 男女別の再雇用又は中途採用の実績
  • 男女別の職種若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績
  • 非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況
  • 男女の賃金の差異

■グループ2:職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率及び平均取得期間
  • 男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績
  • 男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
  • 雇用管理区分ごとの労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
  • 有給休暇取得率

2.情報公表に関する変更

常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は、女性活躍に関する情報公表にあたり、これまでは所定の項目から1つ以上を選択することが求められていましたが、2020年6月1日以降は、次の各グループからそれぞれ1項目以上を選択して、計2項目以上を公表しなければなりません。

■グループ1:働きがいに関する実績(女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供)

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
  • 男女別の採用における競争倍率(区)
  • 労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種又は雇用形態の転換の実績(区)(派)
  • 男女別の再雇用又は中途採用の実績

■グループ2:働きやすさに関する実績(職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備)

  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率(区)
  • 労働者の1月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の1月当たりの平均残業時間(区)(派)
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率(区)

※「(区)」の表示のある項目は、雇用管理区分ごとに公表を行う必要あり。
※「(派)」の表示のある項目は、労働者派遣の役務の提供を受ける場合は派遣労働者を含めて公表を行う必要あり。

3.プラチナえるぼしの創設

「えるぼし」認定企業のうち、女性の活躍推進に関する状況が特に優良な事業主を認定する「プラチナえるぼし」認定が創設されました。

□えるぼし認定、プラチナえるぼし認定の概要(PDFファイル)

4.行動計画の策定等の義務化対象事業主の拡大

常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主はこれまで努力義務とされていましたが、2022年4月1日以降、次の事項を実施しなければなりません。なお、行動計画に盛り込む数値目標は1つ以上でよいなど、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主に求められる改正後の基準とは少し異なります。

  • ✔  自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析
  • ✔  状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
  • ✔  行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
  • ✔  女性の活躍に関する情報の公表

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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