近年の会計不正の動向
2018年7月8日
- 日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、2018年6月26日付けで経営研究調査会研究資料第5号「上場会社等における会計不正の動向」(以下、「本資料」)を公表しました。本資料は2013年4月から2018年3月にかけて、各証券取引所における適時開示制度等で会計不正に関する公表のあった上場会社等146社を集計対象としており、その内容や手口、実施された不正調査手法について研究した結果をまとめたものです。
近年、企業のコンプライアンス意識が高まっているにも関わらず、資本市場への影響が大きな会計不正が後を絶たないことから、本資料は会計監査を担当する公認会計士のみでなく、企業の内部監査等においても参考にすることが期待されています。 -
2014年
3期2015年
3期2016年
3期2017年
3期2018年
3期収益関連の不正会計 件数 18 10 11 17 12 割合 58.1% 38.5% 35.5% 63.0% 40.0% それ以外の不正会計 件数 13 16 20 10 18 割合 41.9% 61.5% 64.5% 37.0% 60.0% 合計 件数 31 26 31 27 30 割合 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (本資料を基に筆者作成)
本資料において集計されている会計不正の発生様態は上図の通りとなっています。収益関連の不正会計は主に売上の架空計上であり、循環取引や工事進行基準計算における見積計上額の恣意的な操作も含まれます。それ以外の不正会計では在庫の過大計上、架空仕入・原価操作や経費の繰延等が主な内訳となっています。
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会計不正の発覚経路 件数 割合 内部統制等 37 26.4% 未公表 29 20.7% 当局の調査等 23 16.4% 公認会計士監査 19 13.6% 内部通報 19 13.6% 内部監査 7 5.0% 取引先からの照会等 6 4.3% 合計 140 100.0% (本資料を基に筆者作成)
2014年3月期から2018年3月期における会計不正の発覚経路として、最も多いのは企業の内部統制等によるものとなっています。未公表を除き、次いで当局の調査等や公認会計士監査といった企業外部からの指摘も多い結果となっています。
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2014年3期 2015年3期 2016年3期 2017年3期 2018年3期 自社 18 15 11 14 9 国内子会社 12 7 19 10 4 海外子会社 2 3 3 2 12 合計 32 25 33 26 25 子会社の割合 43.8% 40.0% 66.7% 46.2% 64.0% 海外子会社の割合 6.3% 12.0% 9.1% 7.7% 48.0% (本資料を基に筆者作成)
不正会計の発生場所の推移をみてみると、年度ごとの件数はほぼ横ばいですが、子会社の割合が多い結果となっています。特に2018年3月期においては海外子会社での発生が半数近くを占めており、企業統治のひとつの課題となっていることが読み取れます。
- 本資料においては上述のほかに公表されている会計不正について様々な観点から分析が行われており、自社における会計不正の防止・発見に有用な資料となっています。近年のコンプライアンス意識の高まりを受けて取り組みを強化している会社が多くなってきていますが、参考にしてみてはいかがでしょうか。
(1)はじめに
(2)不正の発生様態
(3)会計不正の発覚経路
(4)会計不正の発生場所
(5)さいごに
- 仰星監査法人
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仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
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