【ナレッジセンター】興味はあるけど、検討はしない?
人事がRPAの不安を払拭する「たった2つの条件」-前編-
-
近年、クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)、デジタルレイバー(RPA)など、最新のITテクノロジーを活用した業務変革への関心が急速に高まっています。その背景にあるのは、ITテクノロジーの進化は勿論ですが、将来の「生産年齢人口の減少」による労働力の確保や、「働き方改革」による業務生産性向上が経営者の関心事になっているためです。そして、その有効な対策として期待されているのが、AIやRPAによる「デジタルトランスフォーメーション」への変革です。
特にデジタルトランスフォーメーションの第一段階であるRPA(Robotic Process Automation)を活用した「単純作業の自動化」は、この1~2年で一気に注目を高め、ネット上でも導入した企業の事例が目につくようになりました。ただし、RPAの導入はまだ、金融系など一部の業種に限られており、ほとんどの企業は導入に向けた情報収集段階にあります。また、RPAの導入に向けた検討状況を職種でみると、購買部門や経理部門が先行しており、既に検証段階にある企業も増えてきました。一方で、人事部門に至っては「働き方改革」に一番直面している部門でありながらも、RPAを活用した業務自動化を検討する動きはまだまだ鈍いようです。
今回のナレッジセンターでは、人事部門における「RPAの可能性」をテーマに、検討が進まない理由や、検討するために押さえておくべきポイント、稼働後に失敗しないためのポイントを押さえて、「人事がRPAを活用するための2つの条件」をご紹介していきます。
1.人事担当者がRPAで自動化したい業務は?
人工知能(AI)に代表されるITテクノロジーの進化は目覚ましく、この数年のうちに、自律的に学習し高度なオペレーションを代替するレベルまでに到達することが予想されています。既に欧米の先進的企業ではRPA の活用は進んでおり、国内企業でも今後、本格的に普及する中で「人事業務の自動化」の波がくることも予想されています。
この流れを受け、クレオでは、人事領域におけるRPAの可能性として、どの業務の自動化が人事部門に有益か、実際に実務を担当している人事担当者にリサーチを実施しました。
先ず、RPAを適用したい業務について尋ねたところ、最も声が多かったのは、人事システムのデータを活用したリスト作成(Excel)や紙の情報を人事・給与システムに転記するといった作業が上がりました。具体的には、システムの標準帳票とは別に独自の組織別人数表を作成する作業や、休暇申請届(ワークフロー)にある申請理由から「体調不良」のキーワードを基にメンタルヘルスケアの対象者をピックアップする作業、紙上の雇用保険被保険者番号や基礎年金番号のシステムへの転記作業といったものです。
他にも、長時間労働の是正や有期雇用契約における無期転換制度を受けて、サービス残業者や通年で5年に達する見込みの有期雇用契約者を一覧化し、各管理部門長へメールで報告するといった作業もありました。
これらの作業は、人事システムや勤怠システムの仕様(機能)によって、自動化の範囲にバラつきがありますが、システムをカスタマイズする必要が無いこと、一つ一つは細かな作業であっても、自動化を積み上げることで最終的に大きな効果になることなどが、RPAへの期待に繋がっているようです。
2.人事担当者の本音「興味はあるけど、検討はしない?」
先のリサーチは、様々な業種や規模の企業の人事担当者にRPAの基礎を解説し、その後に実施したフリーディスカッションの中から出てきた意見です。RPAの特性(単純で反復性が高い業務に適している)からすると、これら作業の自動化の実現性は高く、RPAと人事業務の相性の良さを感じます。ですが、ディスカッションをとおしてわかったことは、基本的には、人事担当者はRPAに消極的だということです。実は、多くの人事担当者が本当に自動化したい業務は、先に述べた細かな作業ではなく、新入社員の受け入れや年末調整、算定月変、賞与といった一時的に人手不足の状態に陥る年次イベントであることがわかりました。そして、これらの業務を自動化の対象とした場合、ロボットを利用しない期間が長いため、一年を通した投資対効果は下がります(図1)。
また、これらの年次業務は‟ 紙ベース “の作業が多くあるため、仮に一担当者の作業負担を軽減できたとしても、業務単位で見た時の導入効果はあまり期待できません。このような理由から、RPA導入に向けた検討が消極的になっているようです。
更に、新しい技術を取り入れるとなると、‟使ってみなければ効果がどれだけあるか分からない”というリスクが、導入の決済を取り付ける上で壁になっていることも背景にあるようです。図1:年間の平均時間外労働時間の推移
尚、リサーチの中で「人事担当者のRPAに対する印象」について伺ったところ、ポジティブな意見としては「業務効率化の効果あり」が最も多く、次いで「人手不足対策に有効」「人とRPAは共存できる」となりました(図2)
図2:人事担当者のRPAの印象(positive)、有効回答数84
反対に、ネガティブな印象について伺ったところ、「設定が難しい」が最も多く、次に「価格は高いと思う」「一部の企業にしか浸透しない」という意見が続きました。(図3)
図3:人事担当者のRPAの印象(negative)、有効回答数16
この二つの設問の有効回答数は、ポジティブが84に対してネガティブは16でした。ネガティブな意見そのものが少ないことから、人事担当者がRPAに対して肯定的であることが伺えます。ただし、この調査結果からもわかるとおり、人事部門にとってRPAは「効果は期待できるが、設定が難しくコスト負担が大きい」という印象のようです。人事部門の方に、RPAの検討状況を尋ねると、「興味はあるけど、検討はしていない」という話をたまに聞きますが、その理由がよくわかります。
本来、人事部門は法改正によるオペレーション変更の負担が多く、「働き方改革」による人事制度見直しや、人材活用のためのタレントマネジメントの実施など、通常の人事管理や給与計算業務以外にも、やらなければいけないことが山ほどあります。デジタルトランスフォーメーションの流れに関わらず、業務効率化は人事部門の本質的な課題なのです。その中でRPAに対して消極的であることは、これまでにない課題解決のチャンスを逃していると言えるかもしれません。
では、どうすれば人事部門がRPAの導入に前向きに取り組めるようになるのでしょうか。
3.人事部門が押さえておくべき
RPA選定のポイント(条件1)「人事担当者の本音」でお伝えしたとおり、コスト負担や業務全体の効果が見えにくいといったことが、人事部門のRPAの検討のブレーキになっています。言い換えれば、これらの問題を解決できれば、人事部門のRPA導入の実現性は一気に高まります。
そこで、人事部門がRPAを導入するために、押さえておくべきポイントをコスト、効果、検討の観点で以下にまとめました。
1.コスト:無駄なコストの発生を抑え、ROIを高めることができること
2.効 果:紙ベースの作業も含め、業務全体の作業効率を上げることができること
3.検 討:予め、ある程度の導入効果が予測でき、RPAの価値を明確に示せること
これらの条件を満たす製品やサービスであれば、先ずは導入に向けた検討はしやすくなると思います。ちなみに1は、時間課金型サービスの想定です。利用時間に応じた費用負担であれば、RPAを使わない期間のコスト負担は最小限に留めることができます。
2は、RPAとOCRが連携して提供されることを想定しています。特に、AI搭載型の高精度なOCRとRPAが連携すれば、作業単位から業務単位の導入効果を期待できます。
3は、作業テンプレートとトライアル版の想定です。例えば ‟すぐに使えるロボットテンプレート“ と‟トライアル版”があれば、コスト負担のかからない検討段階から、手軽に事前検証をすることができます。つまり、安心してRPA導入に踏み切れるようになるのです。
また他にも、「そもそも、どの作業を自動化すべきかわからない」「自動化したい作業があるが、ロボットの設定をしている暇がない」といった声も少なくありません。そこで、業務プロセスの見直しから自動化対象業務の洗い出しを行う業務コンサルティングや、ロボット作成作業を代行するといったサービスやサポートもあると、より最適なRPAの導入が可能になります。
これらのサービスについてご興味のある方は、クレオの提供するRPAサービスをお奨めします。
是非、一度、ご相談ください。
後編は、人事がRPAを活用するためのもう一つの条件として、‟導入後の押さえておくべきポイント“についてもご紹介していきます。
【ナレッジセンター】
興味はあるけど、検討はしない?人事がRPAの不安を払拭する「たった2つの条件」-後編-