第三者運用機関が選ぶ
「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」
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1.はじめに
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2019年2月27日に『GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」』を公表しています。本稿ではその内容について説明いたします。
2.コーポレート・ガバナンス報告書とは
コーポレート・ガバナンス報告書とは、取引所が定める上場規程において提出することが求められている書類であり、上場会社の比較可能性を高めることを目的としていることから、機関投資家をはじめとした多くの利害関係者に対して企業のガバナンス体制を報告するものとなっています。
なお、企業と投資家との対話を通じ、コーポレート・ガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくため、上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針であるコーポレートガバナンス・コードは2018年6月1日に改訂されています。
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財務情報及び記述情報の充実
- 経営方針・経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求めることとします。
- 事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求めることとします。
- 会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を求めることとします。
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建設的な対話の促進に向けた情報の提供
- 役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求めることとします。
- 政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大します。
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情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組
- 監査役会等の活動状況、 監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求めることとします。
3.コーポレート・ガバナンス報告書の評価
GPIFは、国内株式の運用を委託している17の運用機関に対して、改訂版コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえて記載内容が充実していると思われる「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」の選定を依頼し、その結果高い評価を得た企業を公表しています。
【4機関以上の運用機関から高い評価を得た「コーポレート・ガバナンス報告書」】
花王(株) 7 機関 カゴメ(株) 6 機関 (株)荏原製作所 6 機関 (株)みずほフィナンシャルグループ 5 機関 エーザイ(株) 4 機関 コニカミノルタ(株) 4 機関 (株)資生堂 4 機関 出典:年金積立金管理運用独立行政法人ウェブページの情報をもとに筆者加工
上記の7社について、運用機関の主な評価コメントが紹介されており、各社のルールそのものが評価されているほか、各社の取り組みが報告書に「明記」「具体的に記載」されているといった点が評価されているように読み取れます。
4.さいごに
コーポレート・ガバナンス報告書に対する運用機関の評価コメントは、自社のガバナンス体制を構築していく中で有用なものと考えられます。急に上記7社のような体制を構築することは難しいですが、お手本として捉え、自社のガバナンス体制の構築の一助としてはいかがでしょうか。
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執筆陣紹介
- 仰星監査法人
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仰星監査法人は、公認会計士を中心とした約170名の人員が所属する中堅監査法人です。全国に4事務所(東京、大阪、名古屋、北陸)2オフィス(札幌、福岡)を展開しており、監査・保証業務、株式上場(IPO)支援業務、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、パブリック関連業務、コンサルティングサービス、国際・IFRS関連業務、経営革新等認定支援機関関連業務などのサービスを提供。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。