平成28年「就労条件総合調査」の結果が公表される

2017年3月22日

厚生労働省では毎年さまざまな調査が行われていますが、そのひとつに労働時間制度や定年制等の民間企業の就労条件を調査した「就労条件総合調査」があります。今回は、先月公表された平成28年の集計結果について、その内容の一部を抜粋してご紹介します。

所定労働時間

1日の所定労働時間(1企業平均)は7時間45分、週の所定労働時間(1企業平均)は39時間26分です。前年も同時間となっていますが、10年前の平成18年の調査結果では1日の所定労働時間(1企業平均)は7時間41分、週の所定労働時間(1企業平均)は39時間15分となっており、それに比べて長くなっています。
現在政府で検討されている「働き方改革」を受けて、所定労働時間を短くする大企業もでてきましたので、今後この取り組みが広がればこの数値にも変化がみられるでしょう。

[第1表 1日及び週所定労働時間]より抜粋

注:1)「1企業平均」は、企業において最も多くの労働者に適用される1日の所定労働時間、週所定労働時間をそれぞれ平均したものである。
2)「労働者1人平均」は、企業において最も多くの労働者に適用される1日の所定労働時間、週所定労働時間を企業の労働者数(所定労働時間の定めのない者は除く。)によりそれぞれ加重平均したものである。

年間休日数

平成27年(又は平成26会計年度)の年間休日総数(1企業平均)は108.0日(前年107.5日)です。
企業規模が大きくなるほど年間休日総数が多いですが、この傾向は何十年も変わりません。また、100~109日が32.0%、120~129日が29.6%と割合が多くなっていますが、完全週2日休みや土日祝日休みの企業が多いということでしょう。

[第4表 年間休日総数階級別企業割合、1企業平均年間休日総数及び労働者1人平均年間休日総数]より抜粋

注:1)「1企業平均年間休日総数」は、前年(又は前々会計年度)1年間で、企業において最も多くの労働者に適用される年間休日総数を平均したものである。
2)「労働者1人平均年間休日総数」は、前年(又は前々会計年度)1年間で、企業において最も多くの労働者に適用される年間休日総数を、その適用される労働者により加重平均したものである。

年次有給休暇の取得率

平成27年(又は平成26会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く。)は労働者1人平均18.1日(前年18.4日)、労働者が取得した日数は8.8日(前年8.8日)、取得率は48.7%(前年47.6%)です。
国会での審議がなかなか進みませんが、労働基準法改正案では、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないとされていますので、法案が成立し施行されれば、取得日数・取得率に変化がみられるでしょう。

[第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況]より抜粋


注:1)「付与日数」は、繰越日数を除く。
2)「取得日数」は、前年(又は前々会計年度)1年間に実際に取得した日数である。
3)「取得率」は、取得日数計/付与日数計×100(%)である。
みなし労働時間制

みなし労働時間制を採用している企業割合は11.7%(前年13.0%)です。
みなし労働時間制のうち専門業務型裁量労働制は2.1%(同2.3%)、企画業務型裁量労働制は0.9%(同0.6%)となっており、本制度が施行されてから専門業務型裁量労働制は約29年、企画業務型裁量労働制は約17年が経過しますが、企業への導入はすすんでいないといえます。
なお、企画業務型裁量労働制については、労働基準法改正案で対象業務の拡大や手続きの簡素化が検討されています。

[第9表 みなし労働時間制の有無、種類別採用企業割合]より抜粋

定年

定年制を定めている企業で定年を65歳以上とする企業割合は16.1%(前年16.9%)です。
60才を定年と定めている企業割合は依然高く80.7%(前年80.5%)となっていますが、65才を定年とする企業割合も1000人以上規模で6.7%(前年5.7%)、300~999人規模で8.8%(前年7.4%)、100~299人規模で11.1%(前年10.1%)とわずかですが前年より増えています。

[第12 表 一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合]より抜粋

注:1)[  ]内の数値は、定年制を定めている企業のうち、一律定年制を定めている企業割合である。



上記の他にも、割増率、労務比率、派遣労働者関係費用等の項目に関する結果や、産業別の結果が公表されています。他社の就業ルールを知る機会は少ないと思いますので、このような調査データも参考にしていただき、自社の制度変更の見直しを検討されてはいかがでしょうか。

平成28年就労条件総合調査結果の概況 http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/16/dl/gaikyou.pdf





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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