2016年、主な労働法関係法令の改正を振り返る

2016年12月21日

2016年も残すところあとわずかとなりました。
今年も労働法関係法令ではさまざまな改正が行われましたが、内容を正しく把握し、必要な措置を講じられたでしょうか。
今回は2016年に施行された主な労働法関係法令の改正の概要をご紹介します。

マイナンバーの運用開始(2016年1月1日~)

「被保険者資格取得届」等の雇用保険の届出書類(一部)にマイナンバー(個人番号)の記載が必要となりました。
なお、日本年金機構の情報流出問題で延期となっていた厚生年金保険・健康保険の届出書類へのマイナンバーの記載は、2017年から必要となる見込みです。

青少年雇用促進法関係(2016年3月1日~)

・新卒者等の募集を行う企業は、応募者等から求めがあった場合は、職場情報(①募集・採用に関する状況、②職業能力の開発・向上に関する状況、③企業における雇用管理に関する状況のいずれか1つ以上)を提供することが義務付けられました。
・労働基準法などの労働法関係法令に違反して是正勧告を受けたり、公表された事業所の新卒者等の求人は、ハローワークで一定期間受理されないことになりました。

健康保険法関係(2016年4月1日~)

・傷病手当金・出産手当金の給付額の計算方法が変更となり、支給が開始される前1年間の給与(標準報酬月額)を基に計算されるようになりました。
・健康保険の標準報酬月額の等級が3等級追加され引き上げられました(上限等級121万円から139万円へ)。
・健康保険の年度の累計標準賞与額の上限が引き上げられました(540万円から573万円へ)。

労働保険徴収法関係(2016年4月1日~)

・失業等給付に係る雇用保険料率が引き下げられました(1.0%から0.8%へ)。

障害者雇用促進法関係(2016年4月1日~)

・募集・採用、賃金、配置、昇進などの様々な局面で障害者であることを理由とする差別が禁止されました。
・障害者が職場で働くにあたり支障となる事項を改善するための措置を講ずることが義務付けられました。

高年齢者雇用安定法関係(2016年4月1日~)

・シルバー人材センターの業務は、臨時的・短期的(概ね月10日程度まで)又は軽易な業務(概ね週20時間程度まで)に限定されていましたが、都道府県知事が市町村ごとに指定する業種等については、派遣・職業紹介に限り、週40時間までの就業が可能となりました。

女性活躍推進法関係(2016年4月1日~)

・常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主に、女性の職業生活における活躍の推進のため数値目標や取組みを盛り込んだ行動計画の策定や労働局への届出、また情報公表等が義務付けられました。

中小企業退職金共済法関係(2016年4月1日~)

・中小企業退職金共済について、事業の拡大等により中小企業者でなくなった場合の資産移換先の選択肢として「確定拠出年金」が追加されました。また、転職等による通算の申出期間の延長(2年以内から3年以内へ)や廃止された特定退職金共済からの資産移換が可能になる等の改正も行われました。

雇用保険法関係(2016年8月1日~)

・介護休業給付金の給付率が引き上げられました(賃金の40%から67%へ)。
・介護休業給付金の算定基準となる賃金日額の上限額が引き上げられました。

労働契約承継法関係(2016年9月1日~)

・会社分割の際に行う労働者との個別協議について対象者や説明事項が追加されました。また、労働者への書面通知事項が追加されました。

厚生年金保険法・健康保険法関係(2016年10月1日~)

・厚生年金保険・健康保険について、週の所定労働時間が20時間以上等の一定の要件を満たす短時間労働者への適用が拡大されました。
・健康保険の被扶養者となるための要件のうち、兄姉については同居要件が廃止されました。
・厚生年金保険の標準報酬月額の等級が1等級追加され引き下げられました(下限等級9万8000円から8万8000円へ)。

以上、主な労働法関係法令の改正の概要のみのご紹介でしたが、把握されているものばかりでしたでしょうか。
2017年も育児介護休業法や雇用保険法等の改正が予定されており、就業規則の改定等の対応が必要なものもあります。このように労働法関係法令は頻繁に改正が行われますので、来年もアンテナを張って情報を収集し、必要な対応を行っていきましょう。





執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。


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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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