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目標管理制度の形骸化はなぜ解消しない? 前編

2015年12月10日

2015121001 普及率が約9割の目標管理制度。昨今では賞与反映のための仕組みから、従業員のモチベーション向上や人材育成の為の仕組みへと、制度の目的も変わりつつあります。しかしながら、大半の人事担当者が制度が形骸化して機能していないと感じながらも、有効な改善策を打てずにいます。そこにはどのような壁があり、どうすれば乗り越えることができるのでしょうか。



1.目標管理制度の現状

2013年に実施された労務行政研究所「目標管理制度の運用に関する実態調査」では、目標管理制度は、2000年に大手企業、2005年には中小企業を中心に導入のピークが見られ、現在の普及率は88.5%に達していると報告されました。 そして、最近の目標管理制度のあるべき姿は、賞与や処遇反映に力点を置くのではなく、自己の成長意欲を促すための仕組みへと見直されつつあります。 また、同年の「人を活かす企業ランキング」では、人を活かす企業に必要な条件に、″評価結果や目標達成度のフィードバックの有無”というキーワード が10位以内に入ってくるなど、目標管理制度に対する働き手側の意識の変化もうかがえます。

言い換えれば、目標管理制度は企業にとっての人材という経営資源を活性化させるための手段であり、働き手にとっては仕事に対するモチベーション向上の手段に変わりつつあります。

1954年に発行されたP・F・ドラッカー『現代の経営』の中で、「目標による管理制度」が提唱され、そのコンセプトは″目標と自己統制によるマネジメント“とあります。昨今の目標管理制度の変化は、制度本来の姿が求められつつあることを示しているのかもしれません。


しかしながら、″形だけとりあえず整えた結果、実態が伴わない“ ″制度改定をしても、システム化を図っても効果は見えない”と、自社の目標管理制度が未だ機能していないと感じている人事担当者は少なくありません。



2.目標管理制度が機能しない理由
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自社の目標管理制度が機能していないと感じる理由として、多くの人事担当者が「評価者による制度運用の形骸化」を指摘しています。 2013年に実施された労務行政研究所「目標管理制度の運用に関する実態調査」の結果をみても、評価者のおざなりな運用を指摘する傾向にあります。例えば、目標設定時(上司とのすり合わせ)の問題点として最も多いのは、″管理者が全社方針や組織目標を踏まえた目標内容・レベルの指導や動機付けができていない” ″目標設定面談の実施が義務付けられているが、面談が形式化している“とあります。

また、目標遂行過程では、″管理者が自分の目標達成や日々の業務に追われ、部下への指導・支援が十分にできていない” ″目標設定後は管理者のフォローや関与がない“、達成度の評価時点では、″面談は部下の自己評価の結果を確認する程度で、今後の課題解決や能力開発に関する話し合いになっていない” ″評価面談の実施が義務付けられているが、面談が形式化している“とあります。

特に、″形式的な面談“というキーワードからは、″目標の一方的な押し付け“や″評価結果の合意形成をしていない”といった評価者の怠慢がうかがわれ、被評価者は自分の目標や評価を納得していない状況であることがわかります。つまり、従業員は自分の評価は正当でないと感じ、モチベーションに繋げられないという状況を評価者の怠慢(おざなりな運用)が作り出していると言えます。



3.形骸化の要因とそれを生みだす背景こそが課題

これまでに目標管理制度を機能させるために、いろいろな取り組みが各社でおこなわれています。2013年に実施された労務行政研究所「目標管理制度の運用に関する実態調査」によると、形骸化対策として、″制度に関する目標設定事例や目標管理シートの記入例、マニュアル等の配布“ ″運用の中心となる部署を明らかにし、相談受付や指導を実施” ″個人目標を設定する前に組織目標を共有化するミーティングの実施“が有効であったとあります。ただし、これらの結果の詳細をみると、″やや効果があった”がそれぞれの8割近くを占めており、″非常に効果があった“わけではないようです。おそらく、前述した″評価者の怠慢“を是正する対策になっていないため、やや効果のある対策でしかないと思われます。

これらのことから、目標管理制度を機能させるには、″形骸化の解消“が必須であり 形骸化の要因である評価者の運用を是正することが、有効な形骸化対策であることがわかります。

ここで気をつけなければいけないのは、評価者の怠慢を是正することは一筋縄ではいかないということです。なぜならば、怠慢という行動に伴う改善には、評価者自身の意識の変化がなければ成立しないからです。いくら指導を徹底したり、評価者教育を施したところで、評価者が行動を変えられない理由に、″プレイングマネージャー化した管理者は忙しすぎる“ ″管理者は結果(業績)がすべて” といった会社風土が壁になっているのです。そして、最も厄介な問題は、目標管理制度は、運用を現場に任せる放任主義が一般的で、人事部門が運用の実態(評価者の怠慢)をとらえ、是正する仕組みが存在しないことにあります。

まずは、人事部門が運用の実態を正しく把握できるようにすること、そして、そこから正しく課題を抽出し、正しく対策を打てるようにすることが必要です。このステップを踏みださない限り、いつまでたっても、目標管理制度の形骸化は解消できないのではないでしょうか。

次回は″実態を正しく把握するためのポイント“と″それによる期待効果”について解説します。

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