第15回 財務計画シート作成のポイント
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【5分で納得コラム】今回のテーマは、「財務計画シート作成のポイント」です。
内容
FP&Aの重要な役割の一つに、ビジネスパートナーとしての機能があります。FP&Aは単なる財務データの提供者にとどまらず、積極的に事業運営に関与し、意思決定を支援する役割を果たします。その中核となる業務の一つが財務計画の策定です。 第14回では、財務計画の作成プロセスについて詳しく解説しました。今回は、その実践編として、表計算ソフトを活用した財務計画シートの作成ポイントを解説します。
第15回 財務計画シート作成のポイント
1. 表計算ソフトによる財務計画シート作成のデメリット
自社の予算プロセスに合わせて自由にカスタマイズできる点や、計算ロジックやフォーマットを柔軟に変更できる点、さらに導入・運用コストの低さから、エクセルなどの表計算ソフトを活用して財務計画を作成するケースは実務において広く見られます。
(1) エラーが発生しやすい
・セルの手入力やコピー&ペーストによる計算ミス、数式・関数の参照ミスが起こりやすい
・行数やシート数が増えるほど、エラーの特定に時間がかかり、数式の誤りを一目で把握しにくくなる(2) データの一貫性とバージョン管理が難しい
・複数の人が編集すると、最新バージョンがどれかわからなくなり、変更履歴の管理も困難(誰がどのデータを修正したのか不明)
・「予算_最終版.xlsx」→「予算_最終版_v2.xlsx」→「予算_最終版_本当の最終.xlsx」など、どれが本物の最新版か分からなくなる(3) 計算負荷とパフォーマンスの問題
・何千、何万行ものデータを扱うとファイルサイズが肥大化し、ピボットテーブルの更新時にフリーズすることがある
・SUMIFSやVLOOKUPなどの関数を多用すると処理速度が低下し、操作性が悪化する(4) 視覚化・分析機能が限定的
・グラフやピボットテーブルでの可視化は可能だが、BIツール(Power BI、Tableau)と比べると表現力に劣り、複雑なレポート作成には手間がかかる
・シナリオを変更するたびに手入力で修正する必要があり、ミスが発生しやすい2. 財務計画シート作成のポイント
以下では表計算ソフトによる財務計画シート作成のポイントを解説します。
(1) 財務計画シートの設計と構造
① カラーコードを統一する
文字の色を使い分けることで、財務計画の構造が明確になり、可読性が向上します。例えば、以下のように設定することがあります。
・青色:入力データ
・黒色:計算セル(数式)
・緑色:参照値(外部シート・データベースからのリンクなど)表1 カラーコードの例
① シンプルで分かりやすい構造にする
・シートを機能ごとに分け(例:入力、計算、レポート)、変数はすべて「入力」シートにまとめる
・セルの参照関係を整理し、必要以上に複雑化しない
・1つのセルに1つの計算ロジックのみを記載する表2 シートの例
(2) 計算ロジックと数式の最適化
① 参照のルールを統一
・相対参照(A1)、絶対参照($A$1)、複合参照(A$1, $A1)を適切に使い分ける
・計算負荷が高く、トレースしにくいため、INDIRECT関数を使わない② Excel関数の活用
・IFERROR関数:エラーが発生した場合に指定した値を表示
・SUMIF関数, SUMIFS関数:特定条件の合計
・INDEX関数とMATCH関数:VLOOKUP関数より柔軟な検索
・OFFSET関数やINDIRECT関数は可読性が低下するため、極力避ける(3) パフォーマンス最適化
・大量データはPower QueryやPower Pivotを活用
・不要な計算を減らすため、複雑な配列数式の使用を控える
・数式を範囲指定(例:A1:A1000ではなくA:Aは避ける)
・計算が重くなる場合があるため、マクロ(VBA)は慎重に使用
執筆陣紹介
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。