2025年10月から義務化
育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

2024年12月26日
2025年10月から義務化 育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

【5分で納得コラム】
今回のテーマは「2025年10月から義務化 育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」についてです。

2025年10月から義務化 育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

1. 新たに義務となる措置

子の年齢に応じて、柔軟な働き方を活用しながら“フルタイム”で働くことに対するニーズも増していくことから、新たに、事業主に育児期の柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが義務づけられます(育児介護休業法23条の3)。

育児期の柔軟な働き方を実現するための措置とは、具体的には、次の5つの中から事業主が2つ以上の措置を選択して講じるもので、労働者(ここでいう労働者とは、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者をいいます。)はその中から1つを利用することができます。

① 始業時刻等の変更
② テレワーク等
③ 短時間勤務制度
④ 養育両立支援休暇
⑤ その他(保育施設の設置運営等)

なお、事業主が選択する2つ以上の措置は、全社で一律のものとする必要はなく、業務の性質や実施体制に照らして職種ごとに組合せを変えることも可能です。

また、すでに導入している制度(例えば、小学校就学前の子を養育する労働者を対象に「始業時刻等の変更」及び「短時間勤務制度」を適用しているなど)があり、当該制度が今回の措置の要件を満たす場合は、当該制度を新たに義務となる措置として位置付けることも可能です。ただし、その場合でも後述する手続きは必要になります。

2. 選択的措置の概要

5つの選択肢となる各措置の概要は、次のとおりです。

①始業時刻等の変更

次のいずれかとなります。なお、1日の所定労働時間は従来と同一であるものに限ります。

ア)フレックスタイム制(総労働時間を清算期間における所定労働日数で除した時間が1日の所定労働時間と同一であるもの)
イ)時差勤務制度(1日の所定労働時間を変更することなく始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げるもの)

②テレワーク等

1日の所定労働時間を変更することなく、1週間の所定労働日数が5日の労働者については1ヵ月につき10 日(1週間の所定労働日数が5日以外の労働者についてはその1週間の所定労働日数に応じた日数)以上、原則として時間単位で始業時刻から又は終業時刻まで連続して利用することができるものとなります。

なお、「テレワーク等」とは、自宅で行われることの他、事業主が認める場合にはサテライトオフィス等(労働者個人・事業主のどちらが契約しているものであるかは問いません。)において行われることを含みます。

また、平均して「1ヵ月につき10日」以上の設定が認められていればよいとされていますので、「3ヵ月で30日」とすることも可能です。

③短時間勤務制度

1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとなります。よって、例えば、1日の所定労働時間が8時間の労働者について、1日の所定労働時間を6時間とする措置とあわせて1日の所定労働時間を7時間とする措置などを講じて、労働者に選択させる仕組みとすることも可能です。

④養育両立支援休暇

労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(子の看護等休暇や年次有給休暇等は除き、有給・無給は問いません。)で、1日の所定労働時間を変更せず、1年間に10 日以上、原則として時間単位で始業時刻から又は終業時刻まで連続して利用することができるものとなります。

なお、就業しつつ子を養育するのに資するものであればよく、どのような目的に利用するかは労働者に委ねられることになります。

⑤保育施設の設置運営等

保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与をするものとなります。これには、事業主がベビーシッターを手配し、かつ、そのベビーシッターに係る費用を補助することも含まれますので、例えば、ベビーシッターサービスを含む福利厚生サービス会社と法人契約をして事業主が会費を支払うものは、当該便宜の供与に該当し、当該措置を講じたことになります。

3. 必要な手続き

事業主が2つ以上の措置を選択するにあたっては、職場のニーズを把握するため、あらかじめ、当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は当該労働組合、当該労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(以下、過半数組合等)の意見を聴かなければなりません。

なお、検討した結果、過半数組合等の意見に沿えないケースが生じることも想定されますが、その場合は、過半数組合等にその判断に至った事情等について説明するなどの対応が考えられるとされてます。

4. 施行日

育児期の柔軟な働き方を実現するための措置に関する施行日は2025年10月1日となりますので、それまでにどの措置を選択するかについて検討し、過半数組合等に意見を聴いた上で、就業規則(育児介護休業規程)を改定し、当該措置を講ずる必要があります。

なお、一部の者(勤続1年未満の者など)については、労使協定の締結により育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の対象から除外することができますので、労使協定を締結するか否かについても検討が必要です。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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