介護離職防止に向けて
2025年4月から個別の周知・意向確認を義務化
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【5分で納得コラム】
今回のテーマは「介護離職防止に向けた2025年4月から個別の周知・意向確認を義務化」についてです。介護離職防止に向けて 2025年4月から個別の周知・意向確認を義務化
1. 世界トップの高齢化率
高齢化率とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合をいいますが、一般的に、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、さらに21%を超えた社会を「超高齢社会」といいます。
そして、日本の高齢化率は29.1%(2023年10月1日現在)で、下のグラフをみてもわかるように世界トップの「超高齢社会」であり、今後も高齢化率が拡大していくことが見込まれています。
2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、今後ますます介護が必要な高齢者が増えていくことが想定されますが、高齢者を支えるために必要な介護職員の数は十分ではなく、仕事と介護の両立が必要となる労働者が増えていくことは避けられないでしょう。
2. 申出者の個別の周知・意向確認を義務化
2025年4月から段階的に改正される育児介護休業法には、介護休業を始めとした両立支援制度等が知られずに利用されないまま介護離職に至ることを防止するための措置がいくつか追加されていますが、そのひとつが「介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認」の義務化です。
具体的には、事業主は、労働者から家族の介護に直面した旨の申出があった場合は、当該労働者に対して以下の①から③の事項について周知するとともに、介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向を確認するための措置を講じなければなりません。
① 介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等
② 介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等の利用に係る申出の申出先
③ 介護休業給付に関すること3. 周知・意向確認の方法
個別の周知・意向確認の方法は、以下の①から④のいずれかの方法により行う必要があります。
① 面談
② 書面の交付
③ FAXの送信
④ 電子メール等の送信なお、①についてはオンラインによる面談でも差し支えありません。また、③又は④は労働者が希望した場合に限り、さらに④は労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できる場合に限って選択することができます。
ちなみに、上記の方法は、すでに義務となっている「妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認」の方法と同じです。
4. 施行日
当該個別の周知・意向確認に関する施行日は2025年4月1日となりますので、それまでにどのような方法で対応すべきかについて検討が必要となります。
なお、対応者が人事部でない場合は特に、取得や利用の前例がないことを強調したり、取得や利用をした場合の不利益をほのめかしたりするなどして、取得や利用を控えさせるようなことをすることがないよう、事前に、対応者に制度の趣旨を十分に理解させる仕組みも必要でしょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。