高年齢雇用継続給付の見直し
2025年4月から支給率縮小

2024年11月28日
高年齢雇用継続給付の見直し 2025年4月から支給率縮小

【5分で納得コラム】
高年齢雇用継続給付の見直し 2025年4月から支給率縮小

高年齢雇用継続給付の見直し2025年4月から支給率縮小

1. 高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続給付は、高齢化が進む中、60歳から65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的にした給付で、1995年4月1日から始まった仕組みです。

具体的には、現行制度では、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者のうち被保険者であった期間が5年以上あるなどの一定の方が、60歳時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働いている場合に、ハローワークへの申請により、各月に支払われた賃金の最大15%を給付する仕組みとなっています。

◇ 支給イメージ
60歳時点の賃金が30万円で、支払われた賃金が月額18万円の場合
→ 180,000円÷300,000円=60%で、75%未満に低下しているため
  180,000円×15%=27,000円が給付される

2. 見直しの背景

現在、65歳未満の定年を定めている事業主には、高年齢者雇用安定法により、65歳までの安定した雇用を確保するための措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれか)を講ずることを義務付けていますが、当該措置のひとつである継続雇用制度については労使協定の締結により対象者を限定することができる経過措置が設けられていました。この経過措置も2025年3月31日で終了し、2025年4月1日からは、65歳未満の定年が定められている者については本人の希望により原則として65歳までの雇用が確保される仕組みとなります。

また、いわゆる同一労働同一賃金の考え方に基づき、定年退職後に継続雇用された者についても、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が求められています。

このような状況の中で、65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的にした高年齢雇用継続給付について縮小する見直しが行われました。

3. 最大15%から10%へ

具体的には、高年齢雇用継続給付の支給率は、2025年4月1日からは以下のとおり最大15%から最大10%へ縮小されます。


◇2025年3月31日以前の支給率

各月に支払われた賃金の低下率 賃金に上乗せされる支給率
61%以下 各月に支払われた賃金額×15%
61%超75%未満 各月に支払われた賃金額×15%から0%の間で、賃金の低下率に応じて、賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率
75%以上 不支給

◇2025年4月1日以降の支給率

各月に支払われた賃金の低下率 賃金に上乗せされる支給率
64%以下 各月に支払われた賃金額×10%
64%超75%未満 各月に支払われた賃金額×10%から0%の間で、賃金の低下率に応じて、賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率
75%以上 不支給

※「低下率」とは、60歳時点の賃金額に占める各月に支払われた賃金額の割合をいいます。

なお、変更後の支給率の対象となるのは、2025年4月1日以降に60歳に達した日(その時点で被保険者であった期間が5年以上ない場合はその期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた方で、2025年3月31日以前に60歳に達した日(その時点で被保険者であった期間が5年以上ない場合はその期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた方は現行どおりとなります。

4. 老齢年金との支給調整

65歳になるまでの老齢年金(特別支給の老齢厚生年金など)を受けている方が雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けられるときは年金の一部が支給停止されますが、高年齢雇用継続給付の支給率の縮小に伴いこの仕組みについても見直されます。

具体的には、支給停止される年金額はこれまで最大で賃金(標準報酬月額)の6%に相当する額でしたが、2025年4月1日以降は最大で賃金(標準報酬月額)の4%に相当する額に引き下げられます。


高年齢雇用継続給付の支給を受けている方がいる場合は当該見直しについて案内するとともに、定年再雇用者などの60歳以上の社員について、高年齢雇用継続給付の支給を受けることを前提に給与設計しているなどの場合は、給与制度の見直しの必要がないか確認が必要でしょう。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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