第9回 世界におけるFP&A
-
【5分で納得コラム】
今回のテーマは、「世界におけるFP&A」について解説します。FP&Aは、主に海外企業において導入されており、その役割と重要性がますます高まっています。特に欧米の大企業やグローバル企業では、FP&Aは経営戦略の中核を担う存在として認識され、重要な財務機能の一つとなっています。今回は世界におけるFP&Aの状況を解説します。
第9回 世界におけるFP&A
1. 海外におけるFP&Aの役割の変遷
1990年代以前、予算管理などの管理会計業務はファイナンス部門で行われ、事業部には管理会計の担当者が配置されていませんでした。しかし、1990年代に入り、コンピューターやERPシステムの普及により、財務データを迅速に集計・分析できる環境が整いました。これに伴い、FP&Aの重要性が飛躍的に高まり、海外ではFP&Aの役割が従来の管理会計やファイナンスのプロフェッショナルから、ビジネスパートナーとしての役割へと変化していきました(第3回参照)。海外企業では、CFOがCEOと共に経営責任を負うケースが多く、特に短期的な業績目標の達成が重視されています。CFOは、全社的に最適な意思決定を行うため、事業部や子会社を含む全ての部門に対して強い影響力と権限を持っています。そのため、FP&A部門は本社のみならず、各事業部にも設置され、業績目標の達成を支援する役割を担っています。
2000年代以降、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、ビッグデータやクラウド技術の普及により、FP&Aの機能はさらに高度化しました。特に欧米企業では、FP&Aが企業全体のパフォーマンス管理やリスク分析、戦略立案において不可欠な存在となっており、現在では単なる財務分析に留まらず、企業の意思決定プロセス全体に深く関与するビジネスパートナーとしての役割が求められています。
図 FP&Aの役割の変遷
2. 海外でFP&Aが浸透している背景
(1)グローバル化への対応
グローバル企業において、各国の事業を統合し一元管理するためには、FP&Aの役割が欠かせません。異なる地域の経済状況、通貨変動、税制の影響を考慮した財務予測が求められ、短期的な業績目標を達成するためには、これらの複雑な要素を統合する必要があります。FP&Aは、グローバルレベルで財務計画を策定し、統一した目標を設定する上で重要な役割を果たしています。
(2)デジタル化とデータ分析技術の進展
多くの海外企業は、最新テクノロジーを活用して財務データをリアルタイムで分析し、迅速に予測を行っています。特にアメリカやヨーロッパでは、AIやビッグデータを活用した財務予測モデルが導入され、経営環境の変化に対する迅速な対応力が向上しています。これにより、従来の財務報告にとどまらず、データに基づいた意思決定が可能となり、企業の競争力が一層強化されています。
(3)不確実な時代への対応力強化
海外企業では、経済の不確実性や地政学的リスクへの対応力を強化するために、FP&Aが戦略的な役割を果たしています。アメリカや欧州の企業は、政治的・経済的なリスク(例えばブレグジットや米中貿易摩擦など)に敏感であり、FP&Aは複数のリスクシナリオを想定し、経営陣に適切な対応策を提案することでリスク管理を支えています。金融業界では、FP&Aが金利変動や規制の変更による影響を予測し、企業の財務健全性を維持する取り組みが一般化しています。
このように、従来の静的な財務報告から脱却し、リアルタイムでのデータ分析と迅速な予測を行うことで、経営環境の変化に迅速に対応できる体制が整えられつつあります。
海外企業においてFP&Aは、グローバルな視点を持ち、経営戦略と財務管理を結びつける重要な役割を担っています。グローバル化による複雑な財務構造の管理、デジタル技術によるデータ活用、そして経済や市場の変化への迅速な対応を可能にすることで、FP&Aは競争力を高める不可欠な存在となっています。こうした背景から、FP&Aは海外の先進企業でますます浸透しています。
執筆陣紹介
- 仰星コンサルティング株式会社
-
仰星コンサルティング株式会社は、仰星監査法人グループのコンサルティング会社であり、
クライアントの成長、再生を成功に導くために、付加価値の高いソリューションサービスを提供いたします。
主な業務として、海外子会社等の調査や内部監査支援などのリスクアドバイザリーサービス、
M&A後の業務統合を支援するPMIや決算早期化、IT導入を支援するマネジメントコンサルティングサービス、
買収・組織再編を支援するファイナンシャルアドバイザリーサービス、
上場を成功に導くIPO支援サービスを展開しております。 -
≪仰星コンサルティング株式会社の最近のコラム≫
※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。