第8回 管理連結

2024年10月10日
第8回 管理連結

【5分で納得コラム】
今回のテーマは、「管理連結」について解説します。

第3回で解説したとおり、FP&Aは単なる財務データの提供者にとどまらず、事業運営に積極的に関与し、意思決定プロセスを支援する役割を担っています。特に、FP&Aの主要な役割である業績分析においては、より高度な分析や予測機能を提供するために、グループ全体の業績を適時に把握する必要があり、管理会計の観点から連結財務諸表を作成する必要があります。今回は、FP&A導入に伴う管理連結について解説します。

第8回 管理連結とは

1. 管理連結とは

(1)管理連結と制度連結の違い

管理連結とは、企業グループ全体の経営状況や財務状態を管理会計の観点から把握・分析するために、親会社と子会社など複数の企業の財務データを統合・集約するプロセスを指します。これは、法定報告のために行われる制度連結とは異なり、企業内部での経営管理や意思決定を目的として行われます。

制度連結は、投資家や取引先、金融機関などの外部利害関係者に対して、企業グループの実態を会計基準に基づいて報告するため、厳格な手続きが求められます。一方、管理連結は、経営者が内部的に経営判断を行うことを目的としており、法的な報告義務がないため、内部取引の調整方法などを企業独自の基準で設定し実施されることが多いです。

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(2)管理連結導入のメリット

管理連結を導入することで、以下のメリットが得られます。

①戦略的な意思決定

グループ全体の業績や財務状況を一元的に把握することで、経営者はより適切な戦略的意思決定を行いやすくなります

②子会社・事業部門の業績評価

各子会社や事業部門ごとの業績を評価するため、各部門の貢献度や課題を明確に把握することが可能です。

③内部管理の強化

組織全体のリソース配分やコスト削減、利益向上などを促進し、全体的な効率性を向上させるためのツールとして機能します。

2. 管理連結の導入時のポイント

以下のポイントを押さえることで、管理連結を効率的かつ効果的に導入し、企業グループ全体の経営判断をサポートする体制を構築することができます。

(1)目的の明確化

管理連結を導入する際には、その目的を明確に定義することが最も重要です。一般的な目的としては、企業グループ全体の業績把握の迅速化、経営判断の精度向上、各子会社や事業部門のパフォーマンス評価などが挙げられます。目的を明確に設定することで、導入後の運用が円滑に進みます。

(2)システムの選定と導入

管理連結は毎月行う場合もあるため、業務負担を軽減するために適切な会計システムやERPシステムを導入することが望まれます。システム選定の際には、以下のポイントに留意します。

  • グループ全体の財務データを一元管理できること
  • 各子会社のシステムと連携が可能であること
  • 自動仕訳・集計機能を有していること
  • 適切なセキュリティが確保されていること
  • データ入力の自動化が可能であること

(3)組織間のコミュニケーション

管理連結を効果的に行うためには、子会社や事業部門との円滑なコミュニケーションが欠かせません。各部門の担当者が正確なデータを提供し、スムーズに報告できる体制を構築するために、継続的な情報共有やトレーニングを行うことが重要です。

(4)管理レポートの設計

連結後に作成される管理レポートは、経営層にとって意思決定の基盤となります。そのため、わかりやすく、かつ必要な情報を網羅したものとすることが求められます。特に、財務指標だけでなく、各事業部門のKPI(主要業績評価指標)も反映させることで、より効果的な経営判断を支援します。

執筆陣紹介

仰星コンサルティング株式会社

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