短時間労働者に対する社会保険の適用拡大②
月額賃金が8.8万円以上であること
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前回に引き続き、社会保険の適用拡大の対象となる短時間労働者の要件の確認です。
今回は、以下の「② 月額賃金が8.8万円以上であること」についてその内容を確認します。
- ① 週の所定労働時間が20時間以上であること
- ② 月額賃金が8.8万円以上であること
- ③ 学生でないこと
- ④ 2ヵ月を超える雇用の見込みがあること
月額賃金とは
短時間労働者の適用要件のひとつである「月額賃金」は、基本給や手当の月額合計により算定します。ただし、次の賃金は含まれません。
- (ア)臨時に支払われる賃金(例:結婚祝金)
- (イ)1月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:半期賞与)
- (ウ)時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(例:時間外手当)
- (エ)最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
WEBの記事などでは、わかりやすく「106万円の壁」などの文言を使用して解説されていますので、適用要件のひとつを「月額賃金が8.8万円以上」ではなく「年収が106万円以上」だと認識している方もいるかもしれませんが、これは8.8万円×12月=105.6万円≒106万円から、あくまで年収の目安を示したものになります。短時間労働者の適用要件を満たすか否かは、年収ではなく、賞与などを含まない「月額賃金」で判断しますのでご注意ください。
また、「月額賃金」とは別に、適用要件を満たして標準報酬月額を算定する際の「月額報酬」がありますが、これには上記(ウ)及び(エ)も含まれ、「月額賃金」と「月額報酬」ではその取扱いが異なりますので、混同しないように取扱う必要があります。
時給などの場合
「月額賃金」を算定する際、時給や日給といった月給以外の場合の取扱いについては、Q&Aで次の考え方が示されてます。
日給や時間給によって賃金が定められている場合には、被保険者の資格を取得する月前1月間に同じ事業所において同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者が受けた報酬の額の平均額を算出します。
※「同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者」とは、同一事業所内の同一の部署に勤務し、時間単価や労働日数等の労働条件が同一の方を指します。
ただし、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者がいないような場合は、個別の雇用契約等に基づいて月額賃金を算出します。
短時間で勤務する場合、同一の事業所に、時給や労働日数などの労働条件が同一の者がいるケースはそれほど多くないと思いますので、基本的には個別の雇用契約に基づいて算定する対応になろうかと思います。
例えば、1週間の所定労働時間が定まっている場合であれば、1週間の所定労働時間に基づき算出した賃金額に、1ヵ月あたり平均週数約4.33※(=52÷12)を乗じて月額賃金を算出します。
※約4.33は、1年を52週として計算された年における月平均週数になります。
[例]
- 1日の所定労働時間:5時間
- 勤務日:週4日
- 週の所定労働時間:5時間×4日=20時間
- 時給:1,200円
➡ 月額賃金 =(5時間×4日×1,200円)×(52週÷12月)= 104,000円 ≧ 88,000円
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「テレワーク・フリーランスの労務・業務管理Q&A」 (共著/民事法研究会/2022)、「実務Q&Aシリーズ 退職・再雇用・定年延長(共著/労務行政研究所/2021)、「判例解釈でひもとく働き方改革関連法と企業対応策」(共著/清文社/2021) など。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。