傷病手当金の支給期間の通算化(2022年1月1日施行)
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2022年(令和4年)1月1日から改正健康保険法が施行され、傷病手当金の支給期間が変更になります。
傷病手当金とは
傷病手当金は、私傷病による休業中の被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、私傷病の療養のために休業して給与を受けられない場合に、請求に基づき、3日間の待機期間のあとの休業1日につき、1日あたりの給与相当額の3分の2が支給されるものです。
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から1年6ヵ月までの間で傷病手当金の支給条件に該当する期間です。したがって、例えば、支給を開始した日から1年6ヵ月までの間に一度職場復帰し、その後再び同一傷病により休業して傷病手当金を受給することになった場合、当該1年6ヵ月の期間に傷病手当金を受けない期間(職場復帰期間)がありますが、その分期間が延長されることはないため、傷病手当金が支給される期間は最長1年6ヵ月であって、常に1年6ヵ月となるわけではありませんでした。
支給期間の通算化
2022年(令和4年)1月1日からは、傷病手当金の支給期間が通算されます。
したがって、前述の例で、当該1年6ヵ月の期間に傷病手当金を受けない期間(職場復帰期間)がある場合でも当該分期間が延長されるため、休業期間の連続・断続に関わらず、常に1年6ヵ月分の傷病手当金を受けることができます。
※「令和1年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」(厚生労働省作成リーフレット)より一部抜粋
具体的な事例
【例】①~③のそれぞれの期間について傷病手当金を受けた場合
- 2022年(令和4年)3月1日~4月10日 労務不能(支給期間:38日間)
- 2022年(令和4年)4月11日~4月20日 労務不能(支給期間:10日間)
- 2022年(令和4年)5月11日~6月10日 労務不能(支給期間:31日間)
上記例で傷病手当金を受けた場合の支給期間及び残期間の考え方は以下のとおりです。
- 支給開始日
- :2022年(令和4年)3月4日
※2022年(令和4年)3月1日から3日までの3日間の待期期間後 - 支給期間
- :2022年(令和4年)3月4日~2023年(令和5年)9月3日の549日間
- 残期間
- :470日
(=549日- ①支給期間[38日間]- ②支給期間[10日間]- ③支給期間[31日間])
※事務連絡2021年(令和3年)11月10日Q&Aより一部抜粋
いつから適用?
改正法は、2022年(令和4年)1月1日から適用されます。
なお、施行日の前日において支給を始めた日から起算して1年6ヵ月を経過していない傷病手当金についても適用されますので、具体的には、2020年(令和2年)7月2日以後に支給を始めた傷病手当金が対象になります。
改正前に傷病手当金の支給を受け始めた場合でも改正法の適用を受けることがありますので、対象者がいる場合はお知らせしましょう。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
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食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。
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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。