自己都合退職の給付制限期間の短縮
-
今回は、雇用保険の給付に関する運用の見直しについてご紹介します。
基本手当
雇用保険の被保険者が失業した場合に受けられる給付のひとつに「基本手当」があります。これは、いわゆる失業保険といわれるものです。
この「基本手当」を受けようとする場合は、求職の申込み等の諸手続きが必要となりますが、諸手続き後直ちに支給されるのではなく、求職の申込日以降7日間の「待機期間」と呼ばれる期間を経過した後に給付されます。給付制限
基本手当は原則として待機期間後に給付されますが、一定の事由に該当する場合には、支給が制限されることがあります。これを「給付制限」といいます。
この給付制限のひとつに「離職理由」によるものがあり、これは安易な離職を防止するためであるとされていますが、具体的には次の離職理由に該当する場合に、基本手当の給付が1ヵ月以上3ヵ月以内の期間制限されます。【1】自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合
【2】正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合なお、上記の「正当な理由」とは、労働者の状況(健康状態、家庭の事情等)、事業所の状況(労働条件、雇用管理の状況、経営状況等)その他からみて、その退職が真にやむを得ないものであることが客観的に認められる場合をいいます。
給付制限期間の短縮
いわゆる自己都合で退職する場合は、上記②の「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」に区分され、これまでは通常「3ヵ月」の給付制限期間を設ける運用がなされていました。
今回、転職する労働者が安心して再就職活動を行うことができるよう支援する観点からその運用について変更が加えられ、上記②の給付制限期間を「5年間のうち2回まで」に限り、「2ヵ月」に短縮する措置が試行されることになりました。
この給付制限期間の変更の対象となるのは、2020年10月1日以降に離職した場合となります。
※パンフレット『「給付制限期間」が2か月に短縮されます』(厚生労働省)より抜粋
なお、2020年9月30日以前に離職した場合は、これまで通り、給付制限期間は原則として3ヵ月となります。また、上記の「【1】自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合」も、これまで通り、給付制限期間は原則として3ヵ月となります。
執筆陣紹介
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
-
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「最新整理 働き方改革関連法と省令・ガイドラインの解説」(共著/日本加除出版株式会社)、「アルバイト・パートのトラブル相談Q&A」(共著/民事法研究会)他。
-
≪岩楯めぐみ氏の最近のコラム≫
※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。