社会保険における「住宅」の取り扱い

2019年6月26日

社会保険における“標準報酬月額”を見直す「定時決定」の時期となりました。
定時決定は、原則として毎年1回、4月から6月に支払った報酬に基づいて標準報酬酬月額を決定する手続きで、毎年7月10日までに、日本年金機構に算定基礎届を提出して行います。
この手続きは、算定基礎届に4月から6月に支払った報酬を記載して行いますが、この報酬には、金銭で支払われるものだけでなく、現物で支給されるものも含まれます。
今回は、現物で支給されるもののひとつである「住宅」の取り扱いをご紹介します。

社会保険における「住宅」の取り扱い

1.現物給与の価額

社宅や寮などの住宅を貸与する場合は、その住宅を金額に換算して報酬に含めて取り扱います。
住宅の金額への換算は、都道府県別に厚生労働大臣が定めた1畳あたりの価額に、居室用の室(畳数)を乗じて行います。なお、洋間など畳を敷いていない場合は、1.65㎡を1畳に換算して計算します。

住宅の現物給与の価額=厚生労働大臣が定めた1畳あたりの価額*×居室用の室(畳数)

例)東京の事務所に勤務する者が1ルーム(6畳)の借上社宅に居住する場合の価額
住宅の現物給与の価額=2,590円×6畳=15,540円

*厚生労働大臣が定めた1畳当たりの価額(1人1ヵ月あたりの住宅の利益の額、単位:円)

※2019年4月1日現在

厚生労働大臣が定めた1畳当たりの価額

2.居室用の室

住宅の現物給与の価額は、住宅の全部を対象として計算するのではなく、居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など居住用の室を対象として計算します。
このため、玄関、キッチン、トイレ、浴室、廊下などの居住用ではない室は対象に含めません。また、店、事務室、旅館の客室などの営業用の室も対象に含めません。

居室用の室

※日本年金機構「平成31年4月から現物給与の価額が改定されます」より抜粋

3.勤務地基準

「厚生労働大臣が定めた1畳あたりの価額」は都道府県ごとに定められていますが、本社の所在地や住宅の所在地などを基準にするのではなく、勤務地を基準に適用します。従って、東京都にある事務所に勤務する場合に、千葉県にある借上社宅に居住する場合は、勤務地である東京都の価額が適用されます。
但し、派遣労働者の場合は、実際の勤務地である派遣先の事業所ではなく、派遣元の事業所が所在する都道府県の価額で計算します。

4.社宅料などを負担している場合

社宅料や寮費など被保険者本人がその一部を負担している場合は、本人負担分を差し引いて計算します。

社宅料負担

例)東京の事務所に勤務する者が1ルーム(6畳)の借上社宅に居住し、本人が10,000円を負担している場合
住宅の現物給与の価額=2,590円×6畳=15,540円
15,540円-10,000円=5,540円  ⇒ 5,540円を報酬に算入

標準報酬月額は、社会保険料や将来給付される年金額に影響しますので、適切な取り扱いが必要です。

執筆陣紹介

岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。

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