2015年改正派遣法への対応
~特定労働者派遣事業区分の撤廃~
-
2015年改正の労働者派遣法が施行されて2年6ヵ月が経過しようとしています。 この改正では、新しい期間制限の考え方が導入されたり、雇用安定措置が義務化される等の大きな変更がなされましたが、今回は、労働者派遣事業の免許に関する変更について再確認します。
特定労働者派遣事業区分の廃止
派遣事業は、改正前は「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」の2つに区分されていましたが、「特定労働者派遣事業」は、下表の通り、一度、届出を行えば更新の必要がなく、また、資産要件もないため、「一般労働者派遣事業」より免許が取得しやすい状況にありました。
区分 手続き 許可基準(資産要件) その他 特定労働者派遣事業 届出制 なし 常時雇用者のみの派遣 一般労働者派遣事業 3年ごとの許可制 あり いわゆる登録型の派遣も可 「特定労働者派遣事業」は、常用雇用者のみの派遣を認めるものであるため、派遣労働者の雇用の安定が図られていることから、届出のみで免許を取得することができましたが、実態は雇用の安定が図られている状況ばかりではなく、また、派遣事業の行政処分の大半は「特定労働者派遣事業」た対象であるなど、免許制度の見直しが必要な状況にありました。 そこで、改正後は、派遣事業の健全化を図るため、この2つの区分が廃止され、すべて「許可制」になっています。
許可基準「資産要件」
派遣事業の許可基準は、改正により、雇用安定措置やキャリアアップ措置の追加等の見直しが行われていますが、改正前から「特定労働者派遣事業」を行っている派遣元において、検討を要する許可基準のひとつが下記①の「資産要件」です。
①資産要件
これは、「一般労働者派遣事業」においては改正前より適用されていた基準ですが、「特定労働者派遣事業」にはない基準であるため、新たにクリアすべき点となります。なお、下記②の通り、暫定的な配慮措置も設けられています。基準資産額※1 現預金額 負債 2,000万円×事業所数 以上 1,500万×事業所数 以上 基準資産額※1×7以下 ②小規模の派遣元に対する暫定的配慮措置(負債については①)
*1つの事業所のみを有する常時雇用する派遣労働者数※2が10人以下の事業主基準資産額※1 現預金額 適用期間 1,000万円以上 800万円以上 当分の間 *1つの事業所のみを有する常時雇用する派遣労働者数※2が5人以下の事業主
基準資産額※1 現預金額 適用期間 500万円以上 400万円以上 2018年9月29日まで
※1:基準資産額 = 資産総額-(繰延資産+営業権(のれん))-負債総額※2:常時雇用している派遣労働者数は、過去1年間の月末における派遣労働者(日雇派遣労働者を含む。)の平均人数をいいます。
2018年9月30日以降は新たな許可申請が必要
改正前から「特定労働者派遣事業」を行っている派遣元については、2018年9月29日までは引き続き旧事業を行うことができる経過措置が設けられていますが、その経過措置の期間も残すところ6ヵ月となりました。したがって、当該派遣元については、2018年9月29日までに派遣事業の許可申請が必要となり、その許可申請をしなければ、2018年9月30日以降は派遣事業ができないこととなります。なお、申請してから許可を得るまで約3ヵ月以上かかるようですので、早めの対応が必要となります。
改正前から「特定労働者派遣事業」を行っている派遣元の中には、上記資産要件を満たせないために派遣事業の継続を断念せざるを得ない状況にある場合もあるようですので、派遣先においては、取り引きのある派遣元の派遣免許の状況を確認した上で、2018年9月30日以降の派遣労働者の受け入れの計画立案が必要になります。
- 岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)
-
食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。
≪岩楯めぐみ氏の最近のコラム≫
※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。